「会社名やサービス名で検索する人は増えているのに、問い合わせは思ったより増えない」。そんな相談をよく受けます。原因の多くは、指名検索(しめいけんさく。会社名やサービス名を直接検索することです)への備えが不十分なことと、リスティング広告(検索連動型広告。検索結果の上部に表示される広告のことです)の使い方を混同していることにあります。この記事では、両者の役割の違いと、限られた予算で問い合わせを増やすための使い分け方を整理します。

指名検索が増えても問い合わせが増えない、という現象の背景

展示会やセミナー、紹介、SNSでの発信などをきっかけに、会社名やサービス名を検索してくれる人は年々増えています。これは良い兆候です。すでに興味を持ってくれている証拠だからです。

しかし、検索した後に「公式サイトが見つからない」「情報が古い」「知りたいことが書かれていない」となると、そこで離脱してしまいます。指名検索は、いわば一番成約に近い見込み客からの検索です。にもかかわらず、多くの中小企業はこの入り口を後回しにしがちです。

理由は単純です。指名検索は放っておいても一定数は発生するため、対策の優先順位が下がりやすいのです。広告費をかけて新規のアクセスを増やす施策のほうが「やった感」が出やすく、指名検索への対応は地味に見えます。しかし、すでに関心を持っている人を取りこぼすことは、機会損失としては非常に大きいものです。

原因1: 指名検索への「受け皿」が整っていない

具体的には、次のような状態になっていないか確認してください。

  • 公式サイトが検索結果の1位に出ていない(比較サイトや更新の止まったSNSアカウントが上に来ている)
  • Googleビジネスプロフィール(GBP。Googleマップやローカル検索に表示される、会社の基本情報を無料で管理できるツールです)の営業時間や住所が古いままになっている
  • 料金の目安や実績など、比較検討に必要な情報がサイトに載っていない
  • 問い合わせボタンがわかりにくい場所にある

引っ越し業者を選ぶときのことを想像してみてください。候補の会社名で検索して、公式サイトの情報が古かったり、料金の目安がまったく書かれていなかったりすると、それだけで不安になり、他の候補に流れてしまうはずです。指名検索でも同じことが起きています。すでに関心を持って検索してくれた人に対して、サイト側が答えを用意できていないのです。

まずは自社名・サービス名で実際に検索してみてください。1位に出るのが公式サイトかどうか、GBPの情報が最新かどうかを、自分の目で確認することから始められます。

原因2: リスティング広告を「指名検索」にも「新規開拓」にも同じように使っている

リスティング広告には、大きく分けて二つの使い方があります。一つは、自社名やサービス名など「指名キーワード」に出す広告です。もう一つは、まだ自社を知らない人が検索するような一般的なキーワードに出す広告です。

この二つは、役割もコストの考え方もまったく違います。指名キーワードへの広告は、クリック単価が安い傾向にあります。成約率(コンバージョン率、CVRとも呼びます。サイトに来た人のうち、問い合わせや申し込みに至った人の割合のことです)も高くなりやすいのが特徴です。すでに関心がある人が検索しているためです。

一方、一般キーワードへの広告は、新しい見込み客と出会える可能性があります。しかし、クリック単価は高くなりやすく、成約率も指名キーワードほどには高くなりません。この違いを踏まえずに同じ感覚で予算を配分すると、費用対効果の低い部分に広告費が偏ってしまいます。

私が以前勤めていた沖縄県の外郭団体でFacebookとInstagramの広告運用を担当していたときも、似た課題に直面しました。反応の良い層への配分を優先する形で予算配分を見直した結果、従来の3分の1程度の費用で運用できる体制を確立できました。関心の近い層への対応を先に固めてから、新規開拓の広告に予算を広げる、という順番が効いたと感じています。

指名検索対策とリスティング広告、予算配分の考え方

限られた予算で問い合わせを増やすには、次のような順番で手を打つと無駄が少なくなります。

  1. まず指名検索の受け皿を整える(公式サイトの情報更新、GBPの最新化、問い合わせ導線の見直し)
  2. 指名キーワードでのリスティング広告を、必要な範囲で出稿する(競合が自社名で広告を出している場合の防衛策として)
  3. 受け皿が整った段階で、一般キーワードへの広告や新規開拓の施策に予算を広げる

指名キーワードと一般キーワードでは、広告の役割がこれだけ違います。

項目 指名キーワード広告 一般キーワード広告
対象になる人 すでに社名やサービス名を知っている人 まだ自社を知らない人
クリック単価 低い傾向 高くなりやすい
主な目的 取りこぼし防止・競合対策 新規の見込み客との接点づくり
優先度の目安 受け皿整備の直後 受け皿・防衛策を固めた後

指名キーワードへの広告は「防衛」の意味合いが強く、一般キーワードへの広告は「攻め」の意味合いが強いと考えると、判断しやすくなります。

実践時の注意点・よくある失敗

指名検索対策を進めるときに、よくある失敗がいくつかあります。

一つは、公式サイトの情報更新を後回しにしたまま、広告費だけを増やしてしまうことです。受け皿が整っていない状態で広告費を使っても、離脱が起きるだけで問い合わせにはつながりません。広告を出す前に、まず自社サイトを見直す方が優先です。

もう一つは、どの経路から問い合わせが来たのかを記録していないことです。指名検索からの問い合わせなのか、広告からなのか、SNSからなのかが分からないままだと、次にどこを改善すべきか判断できません。フォームや電話対応の際に、簡単な流入経路のヒアリング項目を用意しておくだけでも、改善のヒントになります。

まとめ

指名検索とリスティング広告は、目的もコストの考え方も異なります。混同したまま予算を使うと、すでに関心のある見込み客を取りこぼしたり、広告費を無駄にしたりしてしまいます。

  • 指名検索は、一番成約に近い見込み客からの検索。まず受け皿(サイト・GBPの情報更新)を整える
  • 指名キーワード広告は「防衛」、一般キーワード広告は「攻め」。役割が違うことを踏まえて予算を配分する
  • どの経路から問い合わせが来たかを記録し、改善の判断材料にする

最後に、この記事に出てきた専門用語を一覧にまとめます。

専門用語 かんたんな意味
指名検索 会社名やサービス名を直接検索すること
リスティング広告(検索連動型広告) 検索結果の上部に、キーワードに応じて表示される広告
GBP(Googleビジネスプロフィール) Googleマップやローカル検索に表示される、会社の基本情報を無料で管理できるツール
コンバージョン率(CVR) サイトに来た人のうち、問い合わせや申し込みに至った人の割合