「メルマガの開封率が下がってきた」「送ったはずの資料送付後のメールに、まったく反応がない」。こうした悩みを、本文の書き方やタイトルの付け方の問題だと考えがちです。しかし確認すべきなのは、そのメールが受信者の迷惑メールフォルダに振り分けられていないかどうかです。開封率が低いのではなく、そもそも届いていないのであれば、本文をどれだけ改善しても数字は変わりません。この記事では、メールの到達率を左右するSPF・DKIM・DMARCという送信元の認証設定について、中小企業が最低限押さえておきたい内容を整理します。
背景:なぜ「送ったのに届かない」が起こるのか
BtoBマーケティングでは、メールが重要な接点のひとつです。ホワイトペーパーをダウンロードした相手へのお礼メール、休眠リードを掘り起こす追客メール、定期的なメルマガなど、多くの場面でメールを使います。
ところが、受信側のメールサービスは、迷惑メール・スパムを防ぐための判定を年々厳しくしています。特にGmailやYahoo!メールのような大手の受信サービスは、近年、大量にメールを配信する送信者に対して、送信元の正当性を証明する仕組みを整えていない場合、迷惑メールフォルダへの振り分けや、受信そのものの拒否を行う方針を明確にしました。
この変化により、以前は普通に届いていたメルマガやフォローメールが、ある時期から急に届かなくなるというケースが起きています。原因は本文の内容ではなく、送信の「仕組み」側にあることが多いのです。HubSpotのようなMA(マーケティングオートメーション。見込み客への対応を自動化・効率化するツールのことです)ツールを使っていても、この仕組みは自動では整わない場合があります。自社の独自ドメインに関するDNS(ドメインネームシステム。インターネット上でドメイン名とサーバーの情報を結びつける仕組みのことです)の設定は、ツールの契約とは別に、自社側で行う必要があるためです。
原因1:送信元の「身分証明」が示されていない(SPF)
メールの送信元を証明する仕組みのひとつが、SPF(エスピーエフ。Sender Policy Frameworkの略で、そのドメインからメールを送る権限を持つサーバーをあらかじめ登録しておく仕組みのことです)です。
銀行で新しく口座を開く場面を思い浮かべてください。窓口で本人確認の身分証明書を求められるのは、本人になりすました別人による不正な手続きを防ぐためです。SPFも同じ役割を果たします。「このドメインから送られてくるメールは、このサーバーから送る権限を持っている」という情報を、あらかじめドメインの管理情報(DNS)に登録しておくのです。
HubSpotなどのMAツールを使ってメールを配信する場合、実際にメールを送り出しているのはツール側のサーバーです。受信側からすると、自社のドメイン名を名乗りながら、見慣れない外部のサーバーから送られてくるメールに見えます。SPFの設定がなければ、これは「なりすまし」と区別がつきません。SPFは、ツール側のサーバーに「このドメインの代理として送信する権限」を与える手続きだといえます。
原因2:メールが「本人確認済み」である証拠がない(DKIM)
次に重要なのが、DKIM(ディーキム。DomainKeys Identified Mailの略で、電子的な署名をメールに付けることで、送信後に内容が改ざんされていないことを証明する仕組みのことです)です。
契約書に押す印鑑や、重要な書類に添えるサインを思い浮かべてください。印影やサインがあることで、その書類が本人の意思で作成され、後から書き換えられていないことを示せます。DKIMは、これをメールの世界で実現する仕組みです。送信するメールに、ドメイン固有の電子的な署名を付けることで、「このメールは、このドメインの管理者が許可した状態で送られた」ことを証明します。
SPFが「送信権限を持つサーバーの一覧」であるのに対し、DKIMは「個々のメール1件ごとの証明書」に近い役割を持ちます。両方がそろうことで、受信側のメールサービスは、送信元をより確実に正当なものだと判断できます。SPFかDKIMのどちらか一方だけでは、十分な証明にならない場面が増えています。
原因3:認証に失敗したメールの「扱い方」を決めていない(DMARC)
SPFとDKIMを設定しても、まだ一つ足りないものがあります。それがDMARC(ディーマーク。Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformanceの略で、SPFやDKIMの確認に失敗したメールをどう扱うかという方針を、受信側に伝える仕組みのことです)です。
身分証明書と印鑑の両方を確認しても、どちらかが怪しいと判断された場合に「それでも受け付けるのか」「受け付けを拒否するのか」という対応方針は、受付側の判断に委ねられます。DMARCは、この判断基準をあらかじめドメインの管理者側から示しておく仕組みです。「認証に失敗したメールは、そのまま届けてよい」「迷惑メールフォルダに振り分けてほしい」「受信そのものを拒否してほしい」といった方針を、DNSの設定として宣言します。
DMARCを設定していないドメインは、受信側のメールサービスにとって「方針が不明なドメイン」として扱われます。方針が不明な場合、受信側は安全側に判断し、迷惑メールフォルダへの振り分けを選びやすくなります。DMARCの設定自体が、受信側に「このドメインはちゃんと管理されている」という印象を与える材料になっているのです。
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実践時の注意点・よくある失敗
SPF・DKIM・DMARCの設定は、一度整えれば終わりというわけではありません。実際の運用でよく見られる失敗には、次のようなものがあります。
- MAツールを導入すれば自動で対応済みと思い込む:多くのツールはDKIMの署名機能自体は備えていますが、自社ドメインのDNSへの設定作業は、利用者側で行う必要があるケースが大半です。契約しただけでは認証が完了していません。
- 設定を外部の制作会社やIT担当者に任せきりで、完了状況を誰も把握していない:担当者の退職や契約終了のタイミングで、設定内容が分からなくなることがあります。設定済みのドメイン名と設定内容は、社内でも分かる形で記録しておくことをおすすめします。
- 独自ドメインではなく、汎用のフリーメールアドレスから大量に配信してしまう:フリーメールのアドレスは、そもそも自社でSPF・DKIM・DMARCを管理できません。メルマガやフォローメールは、自社の独自ドメインのアドレスから送ることが前提になります。
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設定自体は、ドメインを管理しているレンタルサーバーやドメイン管理サービスの管理画面から行います。HubSpotなど多くのMAツールには、設定すべき内容を具体的に表示してくれる機能が用意されています。表示された内容を、ドメインの管理画面に転記する作業が基本になるため、専門的なプログラミングの知識は必須ではありません。ただし、DNSの設定を誤ると、普段使っているメールの送受信そのものに影響することもあるため、設定前には現状の記録を残しておくと安心です。
まとめ
メールの到達率は、本文の工夫だけでは解決できません。送信元を証明する仕組みが整っているかどうかが、見えないところで結果を左右しています。
| 仕組み | 役割 |
|---|---|
| SPF | ドメインの代理として送信できるサーバーを登録する |
| DKIM | メール1件ごとに、改ざんされていないことを電子署名で証明する |
| DMARC | 認証に失敗したメールをどう扱うか、受信側に方針を伝える |
開封率の低さに悩んだときは、本文の改善と並行して、まず自社ドメインの認証設定が整っているかどうかを確認することをおすすめします。
| 記事内の専門用語 | 意味 |
|---|---|
| SPF | ドメインから送信する権限を持つサーバーを登録しておく仕組み |
| DKIM | 電子的な署名でメールの改ざんがないことを証明する仕組み |
| DMARC | SPF・DKIMの認証に失敗したメールの扱い方を受信側に伝える仕組み |
| MA(マーケティングオートメーション) | 見込み客への対応を自動化・効率化するツール |
| DNS | ドメイン名とサーバーの情報を結びつける、インターネット上の仕組み |
無料相談では、HubSpotなどのMAツールの運用状況とあわせて、メールの到達率に関わるドメインの設定状況もうかがいながら、改善の進め方をお伝えしています。
