「セミナーを開いても、いつも同じような顔ぶりしか集まらない」「自社のメルマガ登録者やSNSのフォロワーには限りがある」。中小企業のマーケティング担当者からよく聞く悩みです。単独開催のセミナーだけでは、届く相手はどうしても自社の持つリストの範囲に留まります。この記事では、他社と手を組んで開く「共催セミナー」の考え方と、始め方のポイントを整理します。

単独開催のセミナーが行き詰まる理由

自社セミナー・ウェビナー(オンラインで開催するセミナーのことです)は、広告費をかけなくても集客できる有効な手段です。しかし、開催を重ねるうちに、ある壁にぶつかります。それは、告知を届けられる相手が自社のメルマガ登録者やSNSのフォロワーに限られてしまうことです。

同じリストに何度も告知を送っていると、反応は少しずつ鈍くなっていきます。参加者の顔ぶれも、毎回似たような層に偏りがちです。これでは、新しい見込み客との接点を広げることができません。

このとき有効なのが、他社と手を組んで開催する「共催セミナー」という形です。共催であれば、自社のリストに加えて、相手企業のリストにも告知を届けられます。単独では届かなかった層にリーチできる点が、共催セミナーの最大の利点です。

共催の相手は、必ずしも同業である必要はありません。むしろ、同じ顧客層を持ちながら、扱っている商品・サービスが重ならない企業のほうが、組みやすい相手です。たとえば、Webサイト制作会社と補助金申請支援を行う事業者が組めば、互いの顧客に新しい情報を届け合えます。

これは、リフォーム会社と火災保険の見直しを扱う代理店が、合同で相談会を開くのと似た発想です。どちらも「住まい」という同じテーマに関心がある顧客層を抱えていますが、扱っている商品は重なりません。だからこそ、お互いの顧客を紹介し合っても、競合にはならないのです。BtoB(ビー・トゥ・ビー。会社が個人ではなく、会社に対してものやサービスを売る仕事のことです)のセミナーでも、同じ発想で相手を探すことができます。

複数の企業が関わる場を運営してきた経験から

私自身、沖縄県の外郭団体に勤めていた時期に、沖縄型オープンイノベーション創出促進事業という委託事業の事務局を担当していました。この事業では、複数の企業や支援機関が参加するイベントの集客を任されることが多くありました。

一社だけで告知していたときと比べて、複数の企業が協力して告知を出し合うと、届く範囲が大きく広がる実感がありました。それぞれの企業が持つ取引先やフォロワーに情報が届くため、単独では出会えなかった層からの参加も増えました。

一方で、関わる企業が増えるほど、調整の手間も増えます。誰がどの役割を担うのか、当日の進行をどう分担するのかを、事前にすり合わせておく必要がありました。この調整を怠ると、当日になって役割が曖昧なまま進行してしまう場面もありました。

だからこそ、共催セミナーは「集客力が単純に足し算になる」というだけではありません。事前の役割分担の設計が、成果を左右すると感じています。

また、複数の企業や支援機関が関わる場では、それぞれの立場から見える課題感が違うことにも気づかされました。同じ中小企業の経営者を対象にしていても、支援機関の目線と、実際に商品・サービスを提供する企業の目線では、伝えたいメッセージが微妙に異なります。この違いを事前にすり合わせておかないと、当日の内容がちぐはぐな印象になってしまいます。次の見出しから、この設計の具体的なポイントを紹介します。

共催セミナーで得られる3つのメリット

共催セミナーには、集客力が広がる以外にも、いくつかのメリットがあります。

1つ目は、企画の説得力が増すことです。1社だけで「自社の課題解決法」を語るより、異なる立場の2社が並ぶことで、話に客観性が生まれます。参加者から見ても、営業色が薄まり、話を聞きやすくなります。

2つ目は、準備の負担を分担できることです。集客用の投稿文の作成、当日の司会進行、資料作成といった作業を、1社だけで抱え込まずに済みます。単独開催では手が回らなかった規模のセミナーも、共催なら実現しやすくなります。

3つ目は、共催相手との関係が深まることです。1回の共催で終わらせず、継続して一緒に企画する関係になれば、紹介・代理店(自社に代わって商品やサービスを販売してくれる取引先のことです)としての協業にもつながっていきます。共催セミナーは、単なる集客手段にとどまらず、事業提携の入り口にもなり得ます。

参加者の悩みを起点にテーマを設計する

共催セミナーで見落とされがちなのが、テーマ設計の考え方です。2社が組むと、つい「自社の商品紹介の時間を半分ずつ持とう」という発想になりがちです。しかし、これでは参加者にとって、営業トークを2回聞かされているのと変わりません。

大切なのは、自社の商品ではなく、参加者が抱えている悩みを起点にテーマを組み立てることです。たとえば「Webサイトを作り直したい」という悩みの裏には、「制作費用をどう工面するか」という悩みも隠れています。Webサイト制作会社と補助金申請支援の事業者が組めば、「制作費用の負担を抑えながらサイトを刷新する方法」という、どちらか一社だけでは語れないテーマを提供できます。

このように、2社の専門分野をかけ合わせることで、参加者の悩みをより深く、より具体的に扱えるようになります。当日の構成も、前半で片方が課題の全体像を説明し、後半でもう片方が具体的な解決策を掘り下げるという流れにすると、自然な役割分担になります。テーマが定まれば、告知文の言葉も参加者の悩みに寄せて作りやすくなり、集客の反応にも良い影響が出ます。

共催相手の選び方と進め方

共催セミナーを成功させるには、相手選びが重要です。以下の観点で候補を絞り込みます。

  • 顧客層が近いが、商品・サービスが重ならない
  • 発信力(メルマガの登録者数やSNSのフォロワー数)が自社と極端に離れていない
  • 過去にやり取りがあり、ある程度の信頼関係がある

顧客層が近くても、規模の差が大きすぎると、片方だけが負担を背負う形になりがちです。まずは日頃から付き合いのある取引先や、異業種交流会で知り合った企業に声をかけてみるのが現実的です。

相手が決まったら、早い段階で役割分担を明文化します。テーマ決め、告知文の作成、当日の司会、参加者リストの管理、開催後のフォローといった作業を、どちらが担当するかを一つずつ確認します。この分担を曖昧にしたまま準備を進めると、直前になって「誰も担当していなかった」作業が見つかることがあります。

参加者の連絡先の扱いも、事前に取り決めておく必要があります。共催で集めた参加者リストを、双方がそのまま自社の営業リストとして使ってよいのか。それとも、当日のアンケートで同意を得た人だけを共有するのか。ここを曖昧にすると、後から相手企業との関係がこじれる原因になります。

日程の調整も、共催ならではの手間です。1社だけの開催であれば、自社の都合だけで日時を決められます。しかし共催では、相手企業の担当者のスケジュールや、相手側の繁忙期も考慮する必要があります。準備にかかる期間を考えると、企画から開催まで1〜2か月程度の余裕を持って動き出すのが現実的です。

よくある失敗と注意点

共催セミナーでよくある失敗のひとつが、当日の内容が「2社それぞれの商品説明会」になってしまうことです。参加者からすると、営業トークを2回聞かされているのと変わりません。あくまで参加者の悩みを起点に、共通のテーマを設計する姿勢が欠かせません。

もうひとつの失敗は、開催後のフォローの役割が曖昧なままになることです。「相手企業が連絡してくれるだろう」とお互いが思い込み、結局どちらからも連絡しないまま機会を逃してしまうケースがあります。フォローの担当と期限は、開催前に必ず取り決めておきます。

また、初めての相手といきなり大きな規模の共催を狙うことも注意が必要です。まずは小さな規模で一度試してみて、進め方や役割分担の感覚をつかんでから、次の共催に活かすほうが失敗が少なくなります。

まとめ

共催セミナーは、自社のリストだけでは届かなかった見込み客と出会うための有効な手段です。要点を整理します。

段階 押さえるポイント
相手選び 顧客層が近く、商品・サービスが重ならない企業を選ぶ
役割分担 テーマ決め・告知・当日運営・フォローの担当を明文化する
参加者情報 リストの扱い方を事前に取り決めておく
進め方 まず小さな規模で試し、次回に活かす

いきなり大がかりな共催を目指す必要はありません。まずは付き合いのある取引先に、小さな共催セミナーを持ちかけてみることから始めてみてください。こうした企画の設計についても、無料相談でご相談いただけます。

最後に、この記事で使った専門用語をまとめます。

用語 かんたんな意味
ウェビナー オンラインで開催するセミナーのことです
紹介・代理店 自社に代わって商品やサービスを販売してくれる取引先のことです