「プレスリリースを配信したのに、問い合わせはおろか、取材の連絡すら来ない」。BtoB(ビー・トゥ・ビー。企業が個人ではなく、企業に対して商品やサービスを売るビジネスのことです)の広報(こうほう。自社の情報をメディアや社会に発信し、信頼や認知を広げる活動のことです)を担当する方から、よくいただく相談です。プレスリリースは、書き方と届け方を少し変えるだけで反応が大きく変わります。この記事では、反応が来ない原因と、リード獲得(見込み客からの問い合わせや連絡先を得る活動のことです)につなげるための工夫を整理します。

背景:プレスリリースは「今すぐ客」向けの施策ではない

プレスリリースを配信しても、すぐに問い合わせが増えるわけではありません。多くの場合、プレスリリースが届く相手は、まだ自社の商品やサービスを知らない潜在層(せんざいそう。まだ具体的な検討を始めていないものの、将来お客様になる可能性がある人たちのことです)です。そのため、プレスリリース単体で商談を狙うのは、そもそも狙いが違います。

マーケティングの世界では、見込み客を「潜在層」「準顕在層(じゅんけんざいそう。興味を持ち始めたが、まだ本格的に比較検討はしていない層のことです)」「顕在層(けんざいそう。すでに複数の会社を比べて、決めようとしている人のことです)」の3段階で捉える考え方があります。プレスリリースの役割は、この一番手前の潜在層に「こんな会社がある」と知ってもらう、認知(にんち。存在や名前を知ってもらうことです)の獲得です。ここを商談獲得のための施策だと誤解すると、成果が出ないことに焦ってしまいます。

私自身、沖縄県の外郭団体に勤めていた時期に、総務部門で広報の業務を担当した経験があります。社内の取り組みを社外に発信する仕事を通じて、プレスリリースは「出して終わり」ではなく、その後の関係づくりまで含めて初めて成果につながる施策だと実感しました。この記事で紹介する内容は、その経験も踏まえたものです。

原因1:「自社にとっての新しさ」だけを書いている

プレスリリースの反応が薄い最大の原因は、ニュースバリュー(news value。社会や読者にとって、報道する価値があるかどうかという基準のことです)の不足です。自社にとっては新製品の発売や新サービスの開始は大ニュースです。しかし、メディア側の記者は、その情報が読者や視聴者にとってどう役立つかで判断します。

よくある失敗は、「○○を発売しました」という事実だけを並べてしまうことです。これでは、単なる社内向けのお知らせと変わりません。世の中の動き(物価の上昇、人手不足、法改正など)と自社の取り組みを結びつけて書くと、記者にとって「記事にする理由」が生まれます。

たとえば、単に「新しいサービスを始めた」と書くのではなく、「人手不足に悩む地域の中小企業向けに、こういう課題を解決するサービスを始めた」という書き方にすると、社会性のあるニュースとして扱ってもらいやすくなります。自社の話だけで終わらせず、業界や地域が抱える課題との接点を、タイトルと最初の段落に盛り込むことが重要です。

原因2:配信して終わり、メディアとの関係づくりをしていない

もう一つの原因は、プレスリリース配信サービスに登録して送るだけで満足してしまうことです。多くの記者は、1日に何十件ものプレスリリースを受け取っています。一斉配信されたメールの中から、たまたま自社のものが選ばれる確率は高くありません。

ここで効いてくるのが、メディアリレーションズ(media relations。記者やメディア関係者と、日頃から信頼関係を築いておく活動のことです)という考え方です。自社の業界を担当している記者や、過去に近いテーマを取材した記者に、個別に一言添えて情報を届けるだけで、開封率も反応率も変わってきます。

記者への連絡でよくある失敗が、リリース本文をそのままメールに貼り付けて送ることです。忙しい記者は、長い文章を最後まで読んでくれるとは限りません。「なぜ今このニュースなのか」を2〜3行で要約し、詳細は添付やリンク先で読めるようにしておくと、目を通してもらえる可能性が上がります。写真やデータなど、記事化する際にすぐ使える素材を添えておくことも、記者の手間を減らす配慮になります。

解決策:プレスリリースをリード獲得につなげる3つの工夫

プレスリリース単体では商談は生まれません。しかし、配信後の動線を設計しておけば、認知から問い合わせへとつなげることができます。ここでは3つの工夫を紹介します。

1つ目は、自社サイトのニュースページとの連携です。 プレスリリースは、配信サービスだけでなく、自社サイトのお知らせページにも同じ内容を掲載しておきます。検索エンジンは、更新頻度の高いサイトを評価しやすい傾向があります。オウンドメディア(自社で運営するサイトやブログなど、情報発信の拠点のことです)への蓄積は、SEO(検索エンジン最適化。検索結果で上位に表示されやすくするための取り組みのことです)にも一定の効果が期待できます。

2つ目は、リリースを読んだ人向けの導線を用意することです。 リリース本文の末尾に、関連するサービスページや資料ダウンロードへのリンクを添えておきます。記事化されなかったとしても、配信サービス経由でリリースを直接読んだ担当者が、興味を持ってそのままサイトに訪れるケースがあります。この一歩の導線があるかどうかで、機会損失が変わります。

3つ目は、記事化された後の二次活用です。 掲載してもらった記事は、SNSでの紹介や、営業資料への引用、メールマガジンでの案内など、複数の場面で使い回せます。第三者であるメディアに取り上げられたという事実は、自社が発信するよりも説得力を持ちます。1本の掲載を、社内で最大限に活用する仕組みを作っておくことをおすすめします。

実践時の注意点・よくある失敗

プレスリリースでよくある失敗の一つが、表現の誇張です。「業界初」「日本一」といった表現は、根拠がないまま使うと後々の信頼を損ないます。事実を正確に書きつつ、社会的な意義を丁寧に伝える書き方を心がけたほうが、長期的には信頼につながります。

配信頻度の設計も見落とされがちです。ニュースがあるときだけ不定期に出していると、記者側も存在を覚えてくれません。一方で、大したニュースがないのに頻繁に配信すると、次第に読まれなくなります。四半期に1回など、ある程度のペースを決めて、質を保ちながら継続することが大切です。

社内の承認プロセスに時間がかかりすぎることも、よくあるつまずきです。旬な話題(法改正や季節性のあるニュースなど)は、タイミングを逃すと価値が下がります。プレスリリースのひな形や承認フローをあらかじめ用意しておき、スピード感を持って出せる体制を整えておくとよいでしょう。

まとめ

プレスリリースは、商談を直接生む施策ではなく、認知を広げるための入り口です。要点を整理します。

  • プレスリリースの役割は、潜在層への認知獲得であり、即座の商談獲得ではないと理解する
  • 自社の話だけでなく、社会や業界の課題と結びつけてニュースバリューを作る
  • 配信するだけでなく、担当記者への個別の声かけなどメディアリレーションズを意識する
  • 自社サイトへの掲載、問い合わせへの導線、掲載後の二次活用まで含めて設計する
  • 誇張表現を避け、無理のない配信ペースを決めて継続する
この記事に出てきた専門用語 かんたんな意味
BtoB 企業が個人ではなく、企業に対して商品やサービスを売るビジネス
広報 自社の情報をメディアや社会に発信し、信頼や認知を広げる活動
リード獲得 見込み客からの問い合わせや連絡先を得る活動
潜在層 まだ具体的な検討を始めていないが、将来お客様になる可能性がある人たち
準顕在層 興味を持ち始めたが、まだ本格的に比較検討はしていない層
顕在層 すでに複数の会社を比べて、決めようとしている人
認知 存在や名前を知ってもらうこと
ニュースバリュー 社会や読者にとって、報道する価値があるかどうかという基準
メディアリレーションズ 記者やメディア関係者と、日頃から信頼関係を築いておく活動
オウンドメディア 自社で運営するサイトやブログなど、情報発信の拠点
SEO 検索エンジンで上位に表示されやすくするための取り組み

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