「記事を書いているのに、問い合わせにつながらない」。オウンドメディア(自社で運営するブログやサイトのことです)に力を入れている中小企業から、こうした相談を受けることがあります。アクセス数は伸びているのに、商談や問い合わせには結びつかない。この記事では、その原因と、検索意図(けんさくいい。検索する人がその言葉で何を知りたいのかという、言葉の裏にある目的のことです)から逆算してテーマを決める企画の立て方を整理します。

背景:なぜ「書いているのに増えない」が起きるのか

ブログ記事をコツコツ更新している会社は、以前より増えています。検索エンジンからの集客が無料で続けられる資産になる、という理解が広がってきたためです。実際、記事を書けばアクセス数自体は伸びやすくなります。

しかし、アクセス数と問い合わせ数は、別の指標です。アクセスが増えても、訪れた人がそのまま帰ってしまえば、コンバージョン(CV。問い合わせや資料請求など、サイト上でのゴールとなる行動のことです)にはつながりません。この違いに気づかないまま、記事数だけを追い続けてしまう会社をよく見かけます。

原因の多くは、記事のテーマを決める段階にあります。何について書くかを決めるとき、検索されやすいかどうかだけで選んでいないでしょうか。検索されやすい言葉であっても、自社の商品やサービスに結びつかないテーマであれば、どれだけ読まれても商談にはつながりません。

原因1:検索する人の「検討段階」とテーマがずれている

検索する人は、同じキーワードを調べていても、検討の進み具合はそれぞれ違います。マーケティングの世界では、この段階を大きく3つに分けて考えます。

まだ自分の課題に気づいていない、あるいは言葉にできていない人たちを潜在層(せんざいそう)と呼びます。課題はぼんやり感じているものの、具体的な解決策をまだ探していない人たちを準顕在層(じゅんけんざいそう)と呼びます。そして、すでに課題を自覚し、具体的な商品やサービスを比較検討している人たちを顕在層(けんざいそう)と呼びます。

引っ越しを例に考えてみます。「一人暮らし 荷物整理 コツ」と調べる人は、まだ業者選びを考えていない準顕在層です。一方、「引っ越し業者 見積もり 比較」と調べる人は、業者を決めようとしている顕在層です。同じ引っ越しというテーマでも、記事に書くべき内容はまったく違います。

多くの会社は、アクセス数を増やしやすい準顕在層・潜在層向けのテーマばかりを選びがちです。検索する人が多いため、記事を書けば数字は伸びます。しかし、そこで終わってしまうと、記事を読んだ人がすぐに商談を考える段階まで育っていきません。

原因2:「書きたいこと」から出発している

もう一つの原因は、テーマを決める起点にあります。自社が伝えたいこと、得意なことから書き始めると、検索する人が実際に使っている言葉とずれてしまうことがあります。

たとえば、専門的なサービス名や社内で使っている用語をそのままタイトルにしても、顧客はその言葉で検索しません。顧客は、もっと素朴な悩みの言葉で検索します。「業務効率化ソリューション」ではなく、「見積もり作成 時間がかかる」のような言葉です。

私自身、NEC在籍時にワークフロー関連のプロジェクトで、品質管理標準の作成と社内教育を担当した経験があります。現場ごとにばらばらだった品質の基準を一つにまとめ、教育を行ったところ、実施から1年後に不具合の発生率が下がりました。基準を先に決めてから取り組むと、結果がぶれにくくなるという実感を得た経験です。

記事の企画も同じだと考えています。「何となく良さそうなテーマ」で書き始めるのではなく、検索意図という基準を先に決めてから書く。この順番を変えるだけで、記事ごとの成果のばらつきを減らせます。

解決策:検索意図から逆算する企画の手順

検索意図から逆算してテーマを決めるには、次の4つの手順で進めます。いきなり記事を書き始めるのではなく、企画の段階に時間をかけることがポイントです。

手順1:顧客の検討段階を具体的に洗い出す

まず、自社の顧客が契約に至るまでに、どのような疑問や不安を持つかを書き出します。営業担当や過去の問い合わせ内容を振り返ると、顧客が実際に口にした言葉が見つかります。この言葉こそが、検索する言葉の候補になります。

手順2:段階ごとにキーワードを仮で割り振る

洗い出した疑問を、潜在層・準顕在層・顕在層のどこに当てはまるかで分類します。すべてのキーワードを顕在層向けにする必要はありません。準顕在層・潜在層向けの記事は、将来の顧客との最初の接点を作る役割だと考えます。

手順3:検討段階に応じて記事の着地点を変える

準顕在層向けの記事であれば、課題への気づきを与え、他の関連記事や資料への案内で十分です。一方、顕在層向けの記事では、料金や導入の流れ、他社との違いなど、比較検討に直結する情報まで書き切ります。着地点を混同すると、どちらの読者にも中途半端な記事になります。

手順4:関連テーマを内部リンクでつなぐ

一つのテーマについて、潜在層向け・準顕在層向け・顕在層向けの記事がそろってきたら、記事同士を内部リンク(自分のサイト内のページ同士をつなぐリンクのことです)でつなぎます。これをトピッククラスター(一つのテーマを中心に、関連する複数の記事を内部リンクでまとめる手法のことです)と呼びます。入り口で出会った読者を、サイト内で段階的に顕在層へ導く設計です。

企画段階で注意したいこと

テーマを決める際、2つ注意したい点があります。1つ目は、顕在層向けのテーマだけに偏らないことです。比較検討の記事だけを量産すると、新しい読者との接点が増えず、いずれアクセスが頭打ちになります。

2つ目は、キーワードの検索需要の調査に時間をかけすぎないことです。検索ツールでの数字の確認はあくまで目安であり、完璧な裏付けを待っていると企画が進みません。顧客の実際の言葉を優先し、ある程度のところで書き始める判断も必要です。

まとめ

記事を書いているのに問い合わせにつながらない場合、テーマの選び方そのものを見直す価値があります。要点を整理します。

課題 見直しの方向性
アクセスは増えるが問い合わせにつながらない 検索する人の検討段階(潜在層・準顕在層・顕在層)を意識してテーマを選ぶ
自社が書きたいことから企画している 顧客が実際に口にした疑問・不安の言葉を起点にする
記事ごとの成果にばらつきがある 検索意図という基準を先に決めてから書く
記事同士がつながっていない 関連テーマを内部リンクでつなぎ、段階的に顕在層へ導く
記事内の専門用語 意味
検索意図 検索する人がその言葉で何を知りたいのかという、言葉の裏にある目的
潜在層 まだ自分の課題に気づいていない、あるいは言葉にできていない人たち
準顕在層 課題はぼんやり感じているが、具体的な解決策をまだ探していない人たち
顕在層 すでに課題を自覚し、具体的な商品やサービスを比較検討している人たち
コンバージョン(CV) 問い合わせや資料請求など、サイト上でのゴールとなる行動
トピッククラスター 一つのテーマを中心に、関連する複数の記事を内部リンクでまとめる手法

無料相談では、貴社の顧客が実際に抱えやすい疑問をうかがいながら、記事テーマの洗い出しもあわせてお手伝いします。