「採用サイトをリニューアルしたのに、応募がまったく増えない」。中小企業の採用担当者から、よくこの相談を受けます。社員インタビューを増やし、写真も撮り直したのに、エントリー数は変わらない。実はこれは珍しいことではありません。この記事では、採用サイトで応募が伸びない3つの典型的な原因と、今日から見直せる改善のポイントを整理します。
背景:採用サイトは「作って終わり」になりやすい
採用サイトは、通常のサービスサイトと違って、関わる人が多いという特徴があります。人事担当者だけでなく、経営者や現場の社員、広報担当まで意見を出すことが少なくありません。その結果、「会社の魅力をどれだけ詰め込むか」に議論が集中しがちです。
理念やビジョン、沿革といった会社側が伝えたい情報は、もちろん大切です。しかし、それだけでは応募という行動にはつながりません。訪問者がサイトを見てから応募ボタンを押すまでには、いくつもの段階があります。デザインが関わるのは、そのごく一部にすぎません。
私自身、前職の沖縄ITイノベーション戦略センターで、有料会員向けのLP(ランディングページ。特定の商品・サービスへの申し込みだけを目的にした1枚のページのことです)を改善し、成約ペースを1.5倍にした経験があります。そのとき手を入れたのは、デザインよりも先に、相手が知りたい情報の順番でした。採用サイトの応募改善でも、考え方は基本的に同じです。
「見た目を新しくする」ことと「応募が増える」ことは、切り分けて考える必要があります。まず何が原因で応募につながらないのかを具体的に特定してから、対策を考えるべきです。ここを飛ばして見た目だけを整えても、成果にはつながりにくいのが実情です。
原因1:求人ページが「話したいこと」中心になっている
1つ目の原因は、求人ページの情報の並び順です。多くの採用サイトは、まず会社の理念やビジョンを長く説明し、仕事内容や条件は下のほうに小さく書かれています。これは会社側が「伝えたい順番」であって、求職者が「知りたい順番」ではありません。
引っ越し業者やリフォーム会社の見積もりサイトを思い浮かべてください。多くの人は、複数の会社のサイトを開いて見比べます。そのとき、料金やサービス内容がすぐに見つからないサイトは、途中で閉じられてしまいます。転職活動をしている求職者も、同じように複数の会社の採用サイトを見比べています。
求職者がまず知りたいのは、仕事内容、勤務地、給与レンジ、働き方(在宅勤務の可否や残業時間の目安など)といった具体的な条件です。これらの情報がページを開いてすぐの範囲、いわゆる「ファーストビュー」(ファーストビュー:ページを開いたときに、スクロールせずに画面に映る範囲のことです)から遠い位置にあると、その時点で離脱(離脱:途中でページを閉じてしまい、目的の行動に至らずに立ち去ることです)されてしまいます。
理念やビジョンが不要というわけではありません。ただし、それは条件面の情報を確認した後に読んでもらう位置に置くべきです。「まず知りたいこと」を先に、「伝えたいこと」を後に、という順番の入れ替えだけで、最後まで読んでもらえる確率は大きく変わります。
原因2:応募フォームのハードルが高すぎる
2つ目の原因は、応募フォームそのものにあります。求人ページの中身がどれだけ良くても、最後の一歩である応募フォームで離脱されてしまえば、結果には結びつきません。
よくあるのが、初回の応募段階から、職務経歴書や志望動機を長文で求めるフォームです。求職者からすると、まだ会社のことをよく知らない段階で、時間のかかる作業を求められることになります。これは通常のお問い合わせフォームで、いきなり詳しい相談内容の入力を求めるのと同じ失敗です。フォームの入力項目が多いほど、途中で離脱する人は増えます。
改善策の1つが、「まずは話を聞いてみたい」という段階の求職者向けに、ハードルの低い選択肢を用意することです。具体的には「カジュアル面談」(カジュアル面談:選考ではなく、まずはお互いを知るための気軽な顔合わせのことです)のように、正式な応募の前段階の窓口を設けるやり方があります。名前と連絡先だけで申し込めるようにしておけば、まだ迷っている求職者も接点を持ちやすくなります。
もう一つ見落とされがちなのが、応募後の反応速度です。応募フォームを送っても何日も連絡がなければ、求職者は他社への応募を優先し始めます。フォームの入力項目を減らすことと合わせて、社内で「何営業日以内に一次連絡をするか」という基準を決めておくことも、応募から選考への歩留まりに影響します。
入力項目を見直す際は、いったんすべての項目を書き出し、「今すぐ必須なもの」と「後の面談で聞けばよいもの」に仕分けすることをおすすめします。氏名や連絡先、希望職種は初回から必須で構いません。一方、職務経歴の詳細や志望動機は、最初のカジュアル面談が決まった後に聞いても遅くありません。この仕分け作業だけで、フォームの項目数を半分近くまで減らせることも珍しくありません。
原因3:スマートフォンでの見づらさが放置されている
3つ目の原因は、スマートフォンでの表示です。転職活動中の求職者の多くは、通勤時間や休憩時間にスマートフォンで情報収集をしています。パソコンでの見た目だけを確認して公開された採用サイトは、この使われ方を想定できていないことがあります。
特に見落とされやすいのが、給与や勤務条件を一覧にした表です。パソコン画面ではきれいに並んで見える表も、スマートフォンでは文字が小さくつぶれたり、横スクロールが必要になったりします。一番知りたい情報が読みにくい状態は、そのまま離脱の原因になります。
また、求人票をPDFファイルのまま掲載しているケースも注意が必要です。PDFはスマートフォンでは拡大縮小の操作が必要になることが多く、閲覧のたびに手間がかかります。同じ情報でも、ページ本文の中に文字として掲載し直すだけで、読みやすさは大きく改善します。
応募ボタンの位置にも同じことが言えます。パソコンでは画面の端に固定表示できていたボタンが、スマートフォンでは本文の下のほうに埋もれてしまう設計は珍しくありません。スマートフォンでの実機確認を、公開前の最終チェックに必ず含めることをおすすめします。
画像の容量にも注意が必要です。オフィスの様子や社員の写真を高画質のまま何枚も掲載すると、通勤中のスマートフォンの回線では表示に時間がかかります。表示が遅いページは、内容を読まれる前に閉じられてしまいます。写真は掲載前に圧縮し、必要な枚数に絞ることが大切です。
改善の効果はアクセス解析で確認する
情報の順番やフォームを見直した後は、感覚だけで「良くなった気がする」で終わらせず、数字で確認することをおすすめします。GA4(グーグル・アナリティクス4。無料で使えるアクセス解析ツールで、サイトの訪問者数や行動を確認できます)のようなツールを使えば、求人ページのどこで離脱が多いか、応募フォームのどの入力項目で止まっているかを、ある程度まで把握できます。
特に見ておきたいのが、求人ページの閲覧数に対して、応募フォームを開いた人の割合です。この割合が低ければ、求人ページの情報の順番や内容に課題がある可能性が高いといえます。逆に、フォームは開かれているのに送信されない場合は、入力項目の多さや分かりにくさが原因として疑われます。
原因の切り分けができれば、直すべき優先順位も見えてきます。すべてを一度に変えるのではなく、数字の悪い箇所から順に手を入れていくほうが、限られた時間の中でも成果につながりやすくなります。
実践時の注意点
改善に取り組む際に、よくある失敗が2つあります。1つは、動画や写真といった見た目の要素から手を付けてしまうことです。見た目の改善は分かりやすく、社内の合意も得やすいため、つい優先されがちです。しかし、情報の順番やフォームの負担を見直さないまま見た目だけを変えても、応募数は動きにくいのが実情です。
もう1つは、他社の採用サイトをそのまま参考にしてしまうことです。知名度のある大企業の採用サイトは、ブランド力そのものが応募の動機になっている面があります。中小企業が同じ構成をまねても、同じ効果は期待しにくいことを念頭に置く必要があります。自社の採用段階(まだ応募数自体が少ないのか、応募はあるが選考辞退が多いのか)に合わせて、直す順番を決めることが大切です。
社内だけで見直しを進めると、担当者にとって当たり前になっている情報の抜け漏れに気づきにくいという問題もあります。入社して間もない社員に、実際に採用サイトを見てもらい、分かりにくかった箇所を聞くのも有効な方法です。作り手側の視点と、求職者に近い視点は、意識的に分けて確認する必要があります。
まとめ
採用サイトの応募が増えない原因は、デザインではなく、情報の順番と応募までの手間にあることが多いというのが、この記事で伝えたい要点です。会社が伝えたい情報を先に、求職者が知りたい条件を後に置いていないか。応募フォームの入力項目が、最初の接点にしては多すぎないか。スマートフォンでの見え方を、公開前に実機で確認しているか。この3点を順に見直すだけでも、応募数は変わる可能性があります。
一度にすべてを直そうとせず、まずは求人ページの情報の順番から着手し、次にフォーム、最後にスマートフォン対応という順で進めるのが、負担なく取り組める方法です。
| 記事内の専門用語 | 意味 |
|---|---|
| ファーストビュー | ページを開いたときに、スクロールせずに画面に映る範囲のこと |
| 離脱 | 途中でページを閉じてしまい、目的の行動に至らずに立ち去ること |
| カジュアル面談 | 選考ではなく、まずはお互いを知るための気軽な顔合わせのこと |
| LP(ランディングページ) | 特定の商品・サービスへの申し込みだけを目的にした1枚のページのこと |
| GA4(グーグル・アナリティクス4) | 無料で使えるアクセス解析ツールで、サイトの訪問者数や行動を確認できるもの |
