「アクセス解析を見ると、確かに人は来ている。でも、そのほとんどが二度と戻ってこない」。そんな悩みを聞くことがよくあります。BtoB(企業向けのビジネスのことです)の商材は特に、初めてサイトに来ただけで問い合わせに至る人はごく一部です。この記事では、一度サイトを訪れた人にもう一度思い出してもらうリマーケティング広告の仕組みと、始め方、注意点を整理します。

サイトに来た人の大半が、そのまま帰ってしまうという実態

サイトのアクセス数を増やす取り組みは、多くの会社が力を入れています。SEOや広告で新規のアクセスを集めること自体は、間違った方向ではありません。しかし、そこで見落とされがちな事実があります。サイトに来た人のうち、その場で問い合わせや資料請求に至る人は、ごくわずかだということです。

理由は単純です。BtoBの商材は、比較検討にかかる期間が長いためです。金額が大きく、社内での確認や稟議(りんぎ。担当者だけでは決められず、上司や関係部署の承認を得る社内の手続きのことです)が必要な商材ほど、その場で即決されることはまずありません。一度サイトを見て、他社のサイトも見て、社内で相談して、また思い出したときに検索し直す。そういう行動が普通です。

問題は、この「また思い出したとき」に、自社が候補として思い出されるとは限らないことです。数日、数週間が経てば、サイトを訪れたこと自体を忘れてしまう人も少なくありません。せっかく広告費や労力をかけて集めたアクセスが、そこで途切れてしまっているとしたら、大きな機会損失です。

リマーケティング広告とは何か、仕組みをかんたんに整理する

こうした「一度来たのに戻ってこない人」に、もう一度広告を届ける手法がリマーケティング広告(サイトに来たことがある人だけに絞って、後日別のサイトやSNS上で広告を表示する手法のことです。「リターゲティング広告」と呼ばれることもあります)です。

仕組みは難しくありません。自社サイトに、Google広告やMeta広告(Facebook・Instagramの広告のことです)が提供する小さな計測タグを埋め込んでおきます。すると、そのタグを通じて、サイトに来た人のブラウザに識別情報が記録されます。その後、その人が他のサイトやSNSを見ているときに、自社の広告を表示できるようになる、という流れです。

これは、新しい人にゼロから広告を見せる通常のディスプレイ広告(検索結果ではなく、他のサイトやアプリ上にバナーや画像で表示される広告のことです)とは考え方が異なります。通常のディスプレイ広告は「まだ自社を知らない人」に向けた広告です。一方、リマーケティング広告は「すでに自社を知っている人」だけに絞って配信します。関心の度合いが違う分、同じ広告費でも反応が変わりやすいのが特徴です。

私は以前、沖縄県の外郭団体でFacebook・Instagram広告の運用を担当していました。当時、新規向けの配信だけに予算を使うのではなく、サイトに一度来てくれた人への再アプローチも含めて配分を見直しました。関心の近い層への広告を優先した結果、従来の3分の1程度の費用で運用できる体制を確立できた経験があります。すでに関心を示してくれた相手に届けるほうが、費用対効果が良くなりやすいと実感しました。

始め方の具体的な手順

リマーケティング広告を始めるための手順は、大きく4つです。

  1. 計測タグを設置する。Google広告やMeta広告の管理画面から発行されるタグを、サイトの全ページに埋め込みます。GA4(Googleアナリティクス4。無料で使えるアクセス解析ツールのことです)を導入済みであれば、連携して使える場合もあります
  2. 配信対象のリストを作る。「サイト全体に来た人」だけでなく、「料金ページを見た人」「問い合わせフォームまで進んだが送信しなかった人」など、関心の度合いごとにリストを分けます
  3. 広告の内容を用意する。初めて見る人向けの広告とは違い、「すでに検討中の人」向けの内容にします。導入事例や、比較検討に役立つ資料への誘導などが効果的です
  4. 配信期間と頻度を設定する。同じ人に何度も広告を表示しすぎると、逆に印象を悪くします。表示回数の上限(フリークエンシーキャップと呼びます)を設定しておくと安心です

引っ越し業者の見積もりサイトを一つ見た後、しばらくして別のサイトで同じ業者の広告を見かけた経験がある人もいるかもしれません。あれが、まさにリマーケティング広告の典型的な使われ方です。一度検討した相手を、検討の記憶が薄れる前にもう一度思い出させる仕組みです。

効果を高めるための工夫

リマーケティング広告の効果は、リストの分け方で大きく変わります。サイトに来た人を一律に扱うのではなく、行動に応じて段階を分けることが重要です。

例えば、料金ページや事例ページまで見た人は、関心がかなり高い層です。この層には、無料相談への誘導など、直接的な行動を促す広告を届けます。一方、トップページだけを見てすぐ離脱した人には、まずは会社やサービスの理解を深めてもらう内容の広告のほうが適しています。

配信期間にも工夫の余地があります。BtoBの検討期間は数週間から数ヶ月に及ぶことも珍しくありません。そのため、配信期間を短く区切りすぎると、検討期間の途中で広告が止まってしまいます。自社の商材の平均的な検討期間を踏まえて、配信期間を設定することをおすすめします。

実践時の注意点・よくある失敗

リマーケティング広告を始める際に、よくある失敗がいくつかあります。

一つは、すでに問い合わせや契約が済んだ人にも、同じ広告を配信し続けてしまうことです。せっかく成約した相手に、まだ検討中であるかのような広告を見せ続けると、印象を損ないます。問い合わせ完了ページに専用のタグを設置し、成約済みの人をリストから除外する設定をしておく必要があります。

もう一つは、個人情報の取り扱いに関する説明が不十分なことです。計測タグを使う以上、プライバシーポリシーにその旨を明記し、必要に応じて同意を取得する仕組みを整えておく必要があります。広告の効果だけでなく、この点も合わせて確認しておくことをおすすめします。

まとめ

一度サイトに来ただけで問い合わせに至る人は、ごくわずかです。リマーケティング広告は、その「また思い出したとき」に自社を候補として残しておくための手段です。

要点 内容
課題 サイトに来た人の大半は、その場で問い合わせに至らずそのまま離脱する
対策 計測タグを設置し、来訪者の関心度合いに応じてリストを分けて広告を配信する
効果を高める工夫 検討期間の長さに合わせて配信期間を設定し、成約済みの人は配信対象から除外する

最後に、この記事に出てきた専門用語を一覧にまとめます。

専門用語 かんたんな意味
リマーケティング広告(リターゲティング広告) サイトに来たことがある人だけに絞って、後日別のサイトやSNS上で表示する広告
ディスプレイ広告 検索結果ではなく、他のサイトやアプリ上にバナーや画像で表示される広告
GA4(Googleアナリティクス4) 無料で使えるアクセス解析ツール
フリークエンシーキャップ 同じ人に広告を表示する回数の上限を設定する機能
稟議 担当者だけでは決められず、上司や関係部署の承認を得る社内の手続き