「アクセス数は増えているのに、問い合わせは思ったより増えない」。中小企業の経営者から、よく聞く悩みです。実はサイトを訪れた人の多くは、フォームに入力する前にすでに「検討」を始めています。この記事では、その行動の痕跡であるインテントデータの基本と、追客(ついきゃく。問い合わせをくれた相手に、その後も連絡を取り続けて契約につなげる営業活動のことです)に生かす手順を整理します。

背景:アクセス解析は見ているのに、検討中の人が見えていない

多くの会社は、GA4(Google Analytics 4。サイトへのアクセス数やページの閲覧状況を計測する無料の解析ツールです)を導入しています。しかし、見ているのは全体のアクセス数やページビュー数だけ、というケースが少なくありません。

全体の数字だけを見ていると、「誰が」検討しているのかが分かりません。100人が訪れて1件問い合わせがあっても、残り99人が何も考えていなかったとは限らないからです。

料金ページを3回見た人と、トップページを1回だけ見て離れた人では、検討の深さがまったく違います。しかし合計アクセス数の集計では、この2人は同じ「1セッション」として扱われがちです。

私が沖縄県の外郭団体で有料会員向けLP(ランディングページ。1つの商品・サービスに絞って説明する縦長のページのことです)を改善したときも、申し込み前にどのページを何度も見返しているかを確認しながら改善点を探りました。行動の細かい違いに目を向けたことが、成約ペースを1.5倍にできた要因の一つだったと感じています。

インテントデータとは何か

インテントデータとは、見込み客(将来お客様になってくれるかもしれない人のことです)がまだ問い合わせていない段階で残す、行動の記録のことです。「どのページを」「何回」「どのくらいの時間」見たか、といった情報が含まれます。

代表的なものは次の3種類です。

  • サイト内行動データ:料金ページ・事例ページ・比較ページなど、検討度の高いページの閲覧回数や滞在時間
  • 検索キーワードのデータ:自社の指名検索(ブランド名や商品名そのものでの検索のことです)や、比較・検討を示すキーワードでの流入
  • 外部の行動シグナル:業界メディアの閲覧履歴など、外部データ企業が提供する興味関心の情報(導入には別途契約と費用が必要です)

このうち、多くの中小企業がまず取り組みやすいのは1つ目の「サイト内行動データ」です。GA4やCRM(顧客管理システム。顧客情報や商談の進み具合を記録・管理する仕組みのことです)にすでに蓄積されている情報だからです。新しいツールを導入しなくても、見方を変えるだけで活用を始められます。

原因:多くの会社が「フォーム送信の後」しか見ていない

問い合わせが増えない会社の多くは、フォームを送信した後の対応にばかり力を入れています。もちろん、送信後の追客も大切です。しかし、それだけでは「送信する一歩手前で離脱した人」を見逃してしまいます。

引っ越し業者に依頼するときのことを思い浮かべてください。多くの人は、いきなり見積もりフォームには入力しません。まず複数社のサービス内容や料金ページを見比べ、口コミを確認してから、ようやく問い合わせをします。

BtoB(ビーツービー。会社が会社を相手に商品・サービスを販売する取引のことです)の商談でも同じことが起きています。担当者は上司に相談する前に、料金ページや導入事例を何度も読み返します。その段階では、まだ問い合わせフォームに入力する決心がついていません。

つまり、フォーム送信という「点」だけを見ていると、その手前にいる「検討中の人」が数字上は存在しないことになります。これが、アクセスがあるのに問い合わせが増えない、という感覚の正体の一つです。

解決策1:行動データを可視化する仕組みを整える

まず取り組みたいのは、誰がどのページを見ているかを、担当者が確認できる状態にすることです。具体的には次の手順で進めます。

  1. 検討度の高いページを決める:料金ページ・事例ページ・比較ページなど、申し込みに近い行動を示すページを3〜5個選ぶ
  2. GA4でそのページの閲覧を記録する:ページごとのアクセス数・再訪問の有無を確認できるようにする
  3. CRM・MA(マーケティングオートメーション。見込み客の行動に応じてメール配信や営業への連絡を自動化する仕組みのことです)と連携する:フォームから一度でも連絡先を得た相手であれば、その後のサイト内行動をCRM側でも見られるようにする
  4. 社内で確認する頻度を決める:週に1回など、決まったタイミングで行動データを確認する運用にする

このうち、多くの会社が省略しがちなのが3番目の連携です。GA4とCRMが別々のツールのまま運用されていると、せっかくの行動データが営業担当者の目に届きません。データを見る場所を一本化することが、活用の第一歩です。

匿名の訪問者にはできることが限られる

ここで注意したいのは、まだ連絡先の分からない匿名の訪問者に対しては、できることが限られるという点です。名前もメールアドレスも分からない相手に、個別の営業をかけることはできません。

匿名の訪問者に対しては、資料ダウンロードやメルマガ登録など、連絡先を得るための入口を用意することが優先されます。インテントデータの本領が発揮されるのは、連絡先を得た後の追客の場面です。

解決策2:行動データから優先順位をつけて追客する

連絡先を得た見込み客について行動データが見られるようになったら、次は優先順位をつける段階です。すべての見込み客に同じ熱量で連絡していては、担当者の時間が足りません。

料金ページを繰り返し見ている人と、資料をダウンロードしたきり一度もサイトに戻ってきていない人とでは、連絡すべき優先度が違います。前者には電話などの積極的な接触を、後者にはメールでの情報提供を、というように手段を分けます。

MAツールの多くには、行動ごとに点数をつける「スコアリング」という機能があります。料金ページの閲覧に5点、事例ページの閲覧に3点、といった具合に設定し、合計点が一定を超えたら営業担当者に通知する仕組みです。最初から複雑な配点にせず、まずは2〜3種類のページに絞って点数をつけることをおすすめします。

実践時の注意点・よくある失敗

行動データの活用には、いくつか注意すべき点があります。1つ目は、データを集めることが目的になってしまうことです。行動データを詳しく見られるようになっても、実際に電話やメールで連絡する担当者が動かなければ、成果にはつながりません。

2つ目は、個人情報の扱いに配慮を欠くことです。行動データを使った連絡は、相手にとって「見られていた」という印象を与えかねません。「サイトでご覧いただいた資料について」のように、行動を把握していることを前面に出しすぎない言い回しを心がけると、相手の警戒感を和らげられます。

3つ目は、少人数の会社で無理に高度な仕組みを目指すことです。外部データ企業の行動シグナルまで導入しようとすると、費用も運用の手間も増えます。まずは自社サイト内の行動データとCRMの連携という、無料または低コストで始められる範囲から着手するのが現実的です。

まとめ

インテントデータの活用は、特別なツールを新しく揃えることよりも、すでに手元にあるGA4やCRMのデータを「検討中の人を見つける」という視点で見直すことから始まります。

課題 取り組みの方向性
アクセスはあるのに問い合わせが増えない 検討度の高いページの閲覧を可視化し、検討中の人を把握する
フォーム送信後の対応しか見ていない 送信前の行動データもCRM・MAで追える仕組みを整える
すべての見込み客に同じ熱量で連絡している 行動データに点数をつけ、優先順位をつけて追客する
いきなり高度な仕組みを目指してしまう まず自社サイトの行動データとCRM連携から始める
この記事に出てきた専門用語 かんたんな意味
インテントデータ 見込み客がまだ問い合わせていない段階で残す、行動の記録
GA4(Google Analytics 4) サイトへのアクセス数やページの閲覧状況を計測する無料の解析ツール
見込み客 将来お客様になってくれるかもしれない人
CRM 顧客情報や商談の進み具合を記録・管理する仕組み
MA(マーケティングオートメーション) 見込み客の行動に応じてメール配信や営業への連絡を自動化する仕組み
追客 問い合わせをくれた相手に、その後も連絡を取り続けて契約につなげる営業活動
BtoB 会社が会社を相手に商品・サービスを販売する取引
指名検索 ブランド名や商品名そのものでの検索

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