「GA4(ジーエーフォー:Googleが提供する無料のアクセス解析ツールです)を見ると、問い合わせフォームからの件数はきちんと数えられている。けれど、電話で直接かかってくる問い合わせがどの広告・どのページから来ているのか、まったく分からない」。こうした悩みを抱える経営者・担当者は少なくありません。この記事では、電話とWebの計測をつなぐ「コールトラッキング」という仕組みと、導入を検討する前に確認しておきたいポイントを整理します。
「問い合わせ数」の半分が見えていないという問題
多くの会社では、問い合わせの入り口としてフォームと電話の両方を用意しています。ところが、計測の仕組みが整っているのはフォームだけ、というケースがほとんどです。フォーム送信はGA4やHubSpotで自動的に記録されますが、電話での問い合わせは、受けた担当者が手元のメモに書き留める程度で終わっていることが珍しくありません。
この状態だと、「どの広告経由で電話がかかってきたのか」「どのページを見た人が電話をかけてきたのか」が分からないままになります。コンバージョンの計測がズレる原因はタグの管理不備だけでなく、そもそも電話という経路自体が計測の対象から抜け落ちていることも多いのです。
私は以前、店舗の内装業者と発注者をつなぐマッチングサイト(b-naisou.com)を10年近く運営していました。この事業では、サイトを見た利用者からの最初の連絡が、フォームではなく電話であることが頻繁にありました。検討が具体的になるほど、文章でのやり取りより先に声で確認したいという心理が働くためです。Webのアクセス解析だけを見ていると、こうした電話経由の反応を取りこぼしてしまいます。
BtoB(ビーツービー:企業が企業に対して商品・サービスを販売することです)の商談でも同じ傾向があります。金額が大きく検討期間が長い取引ほど、最終的な一押しとして電話を選ぶ担当者は一定数います。無料相談ページを用意していても、申し込みボタンではなく電話番号を見て直接かけてくる人がいる、という状態は、むしろ自然なことだと言えます。
コールトラッキングとは何か
コールトラッキングは、電話での問い合わせがどこから発生したのかを、Webの計測とひもづけて把握する仕組みです。仕組みの中心になるのが、ダイナミックナンバーインサーション(訪問者ごとに、サイト上に表示する電話番号を自動的に切り替える機能です)と呼ばれる技術です。
具体的には、サービス提供会社から複数の電話番号を借り、広告経由の訪問者には番号A、自然検索(広告を使わずに検索結果から来た訪問者です)には番号B、といった形で、流入経路ごとに違う番号を自動で表示します。訪問者がどの番号に電話をかけたかを記録すれば、その電話がどの経路から生まれたのかが分かる、という理屈です。
さらに進んだサービスでは、通話内容を録音・文字起こしして、CRM(顧客管理システム)に自動で記録する機能も用意されています。HubSpotのようなCRMの導入を済ませている会社であれば、電話の記録もフォームの記録も同じ画面で確認できるようになり、顧客ごとのやり取りを一元管理しやすくなります。
導入を検討する前に確認したい3つのポイント
コールトラッキングは便利な仕組みですが、どの会社にも等しく必要というわけではありません。導入前に、次の3点を確認しておくとよいでしょう。
1. 電話問い合わせの比率はどれくらいか
まず、問い合わせ全体のうち、電話が占める割合を把握します。フォームがほとんどで電話はまれにしか来ない会社であれば、優先度は高くありません。逆に、電話の比率が高い、あるいは高額な商材で電話が最終的な決め手になりやすい会社では、検討する価値があります。
2. 月額費用に見合う情報が得られるか
コールトラッキングのサービスは、電話番号の発行数や通話録音の有無によって月額費用が変わります。費用に対して、広告予算の最適化やページ改善にどれだけ活かせるかを、事前に見積もっておく必要があります。問い合わせ件数がそもそも少ない会社では、費用対効果が見合わないこともあります。
3. 番号表示の法令・プライバシー対応
電話番号を動的に切り替える仕組みは、プライバシーポリシーへの記載が必要になる場合があります。通話を録音する機能を使う場合は、着信時にアナウンスで録音の旨を伝えるなど、利用者への配慮も欠かせません。導入時にはサービス提供会社の案内に従い、必要な表記を整えておきましょう。
よくある失敗:導入しただけで満足してしまう
コールトラッキングを導入しても、成果につながらないケースもあります。典型的なのが、番号を設置しただけで、記録されたデータを誰も見ていない状態です。
せっかく「どの広告から電話がかかってきたか」が分かるようになっても、その情報を広告の予算配分やLPの改善に反映しなければ、計測の意味がありません。月に一度でよいので、フォーム経由と電話経由の問い合わせを合わせて振り返る時間を作ることが大切です。
もう一つの失敗は、通話内容の記録を電話対応者任せにしてしまうことです。システムが自動で録音してくれても、「どんな相談だったか」「次に何をすべきか」をCRMに入力する一手間は、結局は人の手で行う必要があります。問い合わせへの返信スピードと同じく、仕組みを整えることと、それを現場で使い続けることは、別の課題として考えておく必要があります。
まとめ
電話での問い合わせは、Webのアクセス解析だけでは発生源が見えません。コールトラッキングは、この見えない部分を可視化するための選択肢の一つです。
| 検討すべきこと | 内容 |
|---|---|
| 電話比率の把握 | 問い合わせ全体に占める電話の割合を先に確認する |
| 費用対効果の見積もり | 月額費用に見合う情報・改善の余地があるかを判断する |
| 法令・プライバシー対応 | 番号表示や通話録音について、必要な表記を整える |
| 導入後の運用 | 記録したデータを定期的に振り返り、広告やページ改善に反映する |
「問い合わせ数」を成果の指標にする場合、フォームだけでなく電話も含めた全体像を把握できているかどうかは、判断の土台になります。まずは自社の問い合わせのうち、電話が占める割合を確認するところから始めてみるとよいでしょう。
最後に、この記事に出てきた専門用語を整理します。
| 記事内の専門用語 | 意味 |
|---|---|
| GA4 | Googleが提供する無料のアクセス解析ツール |
| コールトラッキング | 電話での問い合わせの発生源を、Webの計測とひもづけて把握する仕組み |
| ダイナミックナンバーインサーション | 訪問者ごとに、サイト上に表示する電話番号を自動的に切り替える機能 |
| 自然検索 | 広告を使わずに検索結果から来た訪問 |
| BtoB | 企業が企業に対して商品・サービスを販売すること |
