「広告の管理画面では成約が10件になっているのに、HubSpotでは7件しかない」。こうした数字のズレに悩む経営者・担当者は少なくありません。原因の多くは、広告やサイトの計測に使う「タグ」の管理にあります。この記事では、タグ管理の基本である「タグマネージャー」の仕組みと、計測がズレる典型的な原因、整え方を整理します。

「数字が合わない」という悩みの正体

Webサイトを運用していると、ページのあちこちに小さな計測用のコードを埋め込む必要が出てきます。GA4(ジーエーフォー:Googleが提供する無料のアクセス解析ツールです)の計測コード、広告の成果を測るコンバージョンタグ、HubSpotの追跡コードなど、サービスを増やすたびにコードの種類も増えていきます。

これらのコードは「タグ」と呼ばれます。タグは、サイトの裏側(ソースコード)に直接書き込む形で設置するのが従来の方法でした。問題は、設置を担当した人がいなくなると、どこに何のタグが書かれているか、誰にも分からなくなることです。

私自身、NECに勤めていた時期、品質管理の標準づくりに携わっていました。そこで痛感したのは、作業が「個人の頭の中」にしかない状態の危うさです。担当者が異動や退職をした瞬間、同じ品質を保てなくなります。タグの管理も同じで、特定の担当者だけが把握している状態は、いつか必ず問題を起こします。

タグの数が増えるほど、どのページにどのタグが入っているかを手作業で管理するのは難しくなります。サイトリニューアルのようにページ構成を変える作業が入ると、さらに混乱しやすくなります。この管理の手間を減らすために使われているのが、タグマネージャーという仕組みです。

タグマネージャーとは何か

タグマネージャーは、サイトのソースコードを直接書き換えずに、複数のタグをまとめて管理できる仕組みです。代表的なものが、Googleが無料で提供している「Googleタグマネージャー」(GTM)です。

使い方のイメージは、電気の配電盤に似ています。部屋ごとに配線をいちいち直接つなぎ直すのではなく、配電盤という一箇所で全体を管理します。タグマネージャーも同じで、サイトには最初に1つだけコードを設置しておき、あとはタグマネージャーの管理画面から、必要なタグを追加・変更していきます。

この仕組みの利点は、タグを追加・変更するたびにサイトのソースコードを修正しなくて済むことです。制作会社に修正を依頼する手間や時間が減り、マーケティング担当者が自分の判断で計測を調整できるようになります。

もう一つの利点が、設置済みのタグを一覧で確認できることです。「このタグは誰が何のために設置したのか」が管理画面に残るため、担当者が変わっても引き継ぎやすくなります。担当者の頭の中にしかなかった情報を、仕組みの中に残せるようになるわけです。

原因1:担当者の頭の中にしかタグの情報がない「属人化」

タグマネージャーを使わず、ソースコードに直接タグを書き込んでいるサイトでよく起きる問題が、属人化(ぞくじんか:特定の人しか分からない・できない状態になることです)です。

設置した担当者が社内にいる間は問題になりません。しかし、その担当者が異動したり、依頼していた制作会社と契約を終えたりすると、サイトのどこに何のタグが入っているか、誰も把握できなくなります。新しく広告のコンバージョンタグを追加したくても、既存のタグに影響しないか確認する手段がありません。

この状態で無理にタグを追加すると、既存のタグを上書きして壊してしまうことがあります。壊れたことに気づくのは、多くの場合、しばらく経ってから「最近、計測の数字がおかしい」と気づいたタイミングです。壊れていた期間のデータは、後から取り戻せません。

タグマネージャーを使えば、担当者が変わっても、管理画面を見ればタグの一覧と設置意図が分かります。属人化を防ぐという意味で、タグマネージャーの導入は、仕組み化(しくみか:特定の人に頼らず、誰でも同じ手順で回せるようにすることです)の第一歩だと言えます。

原因2:同じコンバージョンタグが重複して発行される

2つ目の原因は、タグの重複発行です。広告の管理画面には、通常「コンバージョンタグを設置してください」という案内が表示されます。この案内に従って、担当者やサービスごとに別々にタグを埋め込んでいくと、同じページに似たようなタグが何重にも重なってしまうことがあります。

重複発行が起きると、1件の問い合わせを2件、3件と数えてしまい、広告の成果が実際より良く見える事態が起こります。良く見えた数字をもとに広告予算を増やすと、本来の成果以上にお金を使ってしまうことになります。リマーケティング広告のように、複数の広告媒体を併用している場合は、媒体ごとのタグが積み重なりやすく、特に注意が必要です。

タグマネージャーを使っていれば、既存のタグの一覧を確認した上で、新しいタグを追加するかどうかを判断できます。すでに同じ計測が入っていないかを、追加の前に確認する習慣をつけることが、重複を防ぐ基本です。

原因3:サイトの改修でタグが消え、計測が止まる

3つ目の原因は、サイトの改修やサンクスページの作り直しによって、設置していたタグが消えてしまうことです。ソースコードに直接書き込んだタグは、ページのHTMLを作り直すと、一緒に消えてしまう可能性があります。

このとき厄介なのは、タグが消えたこと自体には、誰も気づきにくいという点です。ページは問題なく表示され、訪問者も普段どおりフォームを送信できます。見た目には何も変わっていないため、計測が止まっていることに気づくのは、数字を定期的に確認している人だけです。

タグマネージャーであれば、ページのデザインや構成を変えても、タグマネージャー側に設置したタグは影響を受けにくくなります。改修のたびにタグの設置状況を見直す手間が減り、HubSpotの初期設定のような他のツールの追跡コードも、同じ管理画面でまとめて管理できます。

導入・運用で注意したいポイント

タグマネージャーを導入すれば、すべての問題が自動的に解決するわけではありません。運用の仕方そのものを整えておく必要があります。

  • 誰が何のタグを設置したか記録する:タグマネージャーの管理画面上にメモを残すか、別途一覧表を作っておくと、後から見返しやすくなります
  • 公開前に動作確認をする:新しいタグを追加したら、本番に公開する前に、正しく発動するかを確認する工程を必ず入れます
  • 不要になったタグは放置せず削除する:使っていないサービスのタグを残しておくと、ページの表示が重くなる原因にもなります
  • 管理画面へのアクセス権限を整理する:退職・契約終了した担当者のアカウントを放置しないようにします

タグマネージャー自体の設置や、既存タグの移行作業は、専門的な知識が必要な場面もあります。自分で対応するのが難しいと感じた場合は、無理に抱え込まず、外部への相談も検討するとよいでしょう。

まとめ

広告やGA4の数字が合わないと感じたら、タグの管理方法そのものを見直すタイミングかもしれません。タグマネージャーを使うことで、属人化・重複発行・計測漏れという3つの典型的な原因を防ぎやすくなります。

原因 対策
属人化 タグマネージャーの管理画面で、設置状況と意図を誰でも確認できるようにする
重複発行 新しいタグを追加する前に、既存タグの一覧を確認する
改修による消失 ソースコード直書きをやめ、タグマネージャー側で管理する

最後に、この記事に出てきた専門用語を整理します。

記事内の専門用語 意味
GA4 Googleが提供する無料のアクセス解析ツール
タグ サイトに埋め込む計測・連携用の小さなコード
タグマネージャー ソースコードを直接書き換えずに、複数のタグをまとめて管理する仕組み
属人化 特定の人しか分からない・できない状態になること
仕組み化 特定の人に頼らず、誰でも同じ手順で回せるようにすること