「うちのサイト、デザインは気に入っているのに問い合わせが増えない」。そう感じたことはないでしょうか。原稿もデザインも見直したのに反応が変わらないとき、意外と見落とされがちなのが表示速度です。この記事では、表示速度が遅いサイトで何が起きているのか、その仕組みと、専門知識がなくてもできる見直し手順を整理します。

なぜ表示速度が問い合わせに影響するのか

サイトを訪れた人は、ページが表示されるまでの数秒を待ってくれません。表示に時間がかかると、内容を見る前に画面を閉じてしまいます。これを「離脱」と呼びます。

離脱そのものは珍しいことではありません。しかし表示が遅いサイトでは、この離脱が本来より多く発生します。せっかく広告やSEO(検索エンジンからの流入を増やす取り組みのことです)でサイトに人を呼び込んでも、表示の遅さで入り口の時点で機会を失っている可能性があります。

多くの経営者・担当者は、問い合わせが増えない原因をデザインや原稿の内容に求めがちです。もちろんそれらも重要です。ただし、どれだけ良い原稿を用意しても、表示される前に画面を閉じられてしまえば読んでもらえません。表示速度は、原稿やデザインより手前にある土台の問題です。

表示速度が軽視されやすい理由の一つに、社内で確認する環境と、実際の見込み客が見ている環境の違いがあります。オフィスの安定した回線・新しいパソコンで見れば、多少重いサイトでも快適に感じます。しかし外出先でスマートフォンの回線から見ている見込み客にとっては、同じサイトが何倍も遅く感じられることがあります。担当者自身が「遅い」と気づきにくいことが、問題の発見を遅らせる原因になっています。

私自身、以前運営していた店舗マッチングサイト(b-naisou.com)を改善し、アクセス数を3倍にした経験があります。改善の中身はページ構成や導線など多岐にわたりましたが、その過程で「表示が遅いだけで多くの人が離れていく」場面を何度も目にしました。デザインを直す前に、まず表示の重さを疑う価値があると実感しています。

何がサイトを遅くしているのか

表示速度が遅くなる原因は、専門的な設定ミスだけではありません。むしろ中小企業のサイトでは、次のような身近な要因が積み重なっているケースが多く見られます。

画像の容量が大きすぎる

スマートフォンで撮影した写真をそのままサイトに載せると、1枚で数MB(メガバイト)になることがあります。ページに写真を5枚並べれば、それだけで読み込みに時間がかかります。画像を圧縮する、つまりファイルサイズを小さくしてから使う一手間で、多くの場合は改善します。

便利な機能を詰め込みすぎている

チャットツール、アクセス解析、SNS連携、口コミ表示など、便利な機能を追加のスクリプト(プログラムの部品)として埋め込んでいくと、その分だけ読み込む処理が増えます。1つ1つは軽くても、積み重なると重くなります。

サーバー(サイトのデータを置いている場所)の性能不足

格安の共有サーバーを使っている場合、アクセスが集中する時間帯に表示が遅くなることがあります。普段は問題なくても、広告出稿やメディア掲載でアクセスが急増したタイミングで表示が遅くなり、機会損失につながる例もあります。

過去に追加した仕組みが放置されている

サイトリニューアルの際に、古いプラグイン(追加機能)や使っていない計測タグが削除されずに残っていることがあります。使っていない機能が裏で動き続け、表示を遅くしている場合があります。

動画をトップページで自動再生している

会社紹介やサービス紹介の動画をトップページに埋め込み、訪問と同時に自動再生させているサイトを見かけます。動画は画像よりもデータ量が大きく、読み込みに時間がかかります。見せたい気持ちは理解できますが、自動再生ではなくクリックして再生する形にするだけでも、最初の表示は軽くなります。

Core Web Vitalsという指標とSEOとの関係

表示速度は、感覚だけで判断するものではありません。Googleは「Core Web Vitals(コア ウェブ バイタルズ)」という指標を公開しており、これを使えばサイトの快適さを数値で確認できます。代表的な指標の一つがLCP(Largest Contentful Paint、エルシーピー)で、ページの主要な内容が表示されるまでの時間を示します。

この指標が重要なのは、単に見た目の使い勝手だけの話ではないからです。Googleは検索順位を決める要素の一つとして、こうした表示速度の指標を考慮していると案内しています。つまり表示が遅いサイトは、訪問者に離脱されるだけでなく、検索結果でも不利になる可能性があります。

自分のサイトが今どのくらいの速さなのかは、Googleが無料で公開している「PageSpeed Insights(ページスピード インサイツ)」というツールで確認できます。サイトのURLを入力するだけで、パソコン・スマートフォンそれぞれの速度を点数化してくれます。専門知識がなくても、まずは自社サイトの点数を一度確認してみることをおすすめします。

なお、Core Web Vitalsはあくまで検索順位を決める要素の一つであり、これだけで順位が決まるわけではありません。コンテンツの内容や被リンク(他サイトから紹介されるリンク)といった要素の方が影響は大きいとされています。ただし、内容がどれだけ良くても表示が極端に遅ければ評価が下がりうるという位置づけで理解しておくと、優先順位を判断しやすくなります。

表示速度を見直す具体的な手順

原因を推測するだけでは改善は進みません。次のような順番で、優先度の高いところから手をつけると無理がありません。

  1. PageSpeed Insightsで現状を数値化する:改善の前後を比較するために、まず今の点数を記録します。
  2. 画像を圧縮する:ツールを使って画像を軽くする、または表示サイズに合わせて縮小するだけでも効果が出やすい部分です。
  3. 使っていない機能・タグを棚卸しする:過去に追加した計測タグや外部サービスの連携が今も必要か、一度リストアップして確認します。
  4. 制作会社やエンジニアに数値を見せて相談する:サーバーの見直しやコードの調整は専門知識が必要な領域です。自分で判断がつかない部分は、PageSpeed Insightsの結果を見せながら相談すると話が早くなります。

すべてを一度に直そうとする必要はありません。まずは効果の出やすい画像まわりから着手し、数値の変化を見ながら次の対策に進むほうが、担当者の負担も少なく済みます。

よくある失敗と注意点

表示速度の改善に取り組む際、いくつか陥りやすい落とし穴があります。

まず、点数を上げること自体が目的になってしまうケースです。PageSpeed Insightsの点数は目安であり、満点を目指す必要はありません。問い合わせにつながる程度まで改善できれば十分です。

次に、パソコンの画面でしか確認しないケースです。多くの見込み客はスマートフォンからサイトを訪れます。パソコンでは快適でも、スマートフォンの回線では遅く感じることがあるため、必ず両方で確認してください。

最後に、改善後の効果測定をしないケースです。表示速度を直した後にアクセス解析(GA4など)で直帰率や滞在時間の変化を見なければ、効果があったのかどうか分かりません。改善は一度きりで終わらせず、数値で振り返る習慣をつけることが大切です。

また、サイトを新しく作り直すタイミングで速度対策を後回しにしてしまう失敗もよくあります。デザインや原稿の完成を優先するあまり、公開直前になって画像も機能も詰め込んだ状態で本番公開し、そのまま放置されるパターンです。リニューアルの計画段階から、表示速度も原稿・デザインと同じ優先度の項目として組み込んでおくと、後から慌てて手直しする事態を避けられます。

まとめ

サイトの表示速度は、デザインや原稿の内容よりも手前にある土台の部分です。ここが整っていないと、どれだけ良いコンテンツを用意しても読んでもらう前に離脱されてしまいます。

見直しポイント 内容
現状把握 PageSpeed Insightsで自社サイトの点数を確認する
画像の見直し 容量の大きい画像を圧縮・縮小する
不要な機能の棚卸し 使っていない計測タグ・外部連携を整理する
サーバー・コードの相談 専門知識が必要な部分は数値を見せて制作会社に相談する
効果測定 改善後にアクセス解析で直帰率・滞在時間の変化を確認する

まずは自社サイトのURLをPageSpeed Insightsに入力して、現状の点数を確認するところから始めてみてください。

この記事に出てきた専門用語 かんたんな意味
離脱 ページの内容を見る前・見た後に、そのままサイトを閉じてしまうこと
プラグイン サイトに機能を追加できる、後付けの部品のようなソフト
Core Web Vitals Googleが公開している、サイトの表示の快適さを測る指標のこと
LCP(Largest Contentful Paint) ページの主要な内容が表示されるまでにかかる時間を示す指標
PageSpeed Insights Googleが無料で提供している、サイトの表示速度を数値で確認できるツール
直帰率 サイトに訪れた人が、他のページを見ずにそのまま離れてしまった割合