「GA4(ジーエーフォー。Googleが無料で提供しているアクセス解析ツールのことです)を開いても、見たい数字にたどり着くまでに何回もクリックする」。そんな声を、これまで何度も聞いてきました。原因の多くは、指標そのものの難しさではなく、見るべき数字が複数の画面に散らばっていることにあります。Googleは2026年9月、主要な指標を1つの画面にまとめて表示できる新機能「ダッシュボード」をGA4に追加したと案内しています。この記事では、何が変わったのか、中小企業が使う場合に何を並べればよいかを整理します。

GA4に追加された「ダッシュボード」機能とは

Googleアナリティクス(GA4)のヘルプセンター「What’s new in Google Analytics」ページによれば、この新しい「ダッシュボード」機能は2026年9月9日ごろから順次利用できるようになったとされています。海外の広告・マーケティング系メディアppc.landや、国内のアクセス解析ブロガーの記事でも、同時期に同様の内容が紹介されています。正式な発表ブログや記者発表ではなく、ヘルプページの更新とGoogleアナリティクス公式のSNSアカウントでの告知が中心だったようで、気づかずに見過ごした担当者も多いと見られます。

この機能でできることは、シンプルです。GA4のレポート画面に表示されている数字やグラフを、ボタン一つで「ダッシュボード」という専用の画面に追加できます。追加したカード(数字やグラフを表示する枠のことです)は、ドラッグ操作で自由に並べ替えたり、大きさを変えたりできます。一つのダッシュボードに置けるカードの数には上限があり、15枚程度までとする報告があります。

これまでも、GA4には「レポートのスナップショット」という、集客・エンゲージメント・収益などの概要を1画面で見られる機能がありました。ただし、これは基本的にGoogle側が用意した固定のレイアウトです。今回のダッシュボード機能は、自分がふだん見たい指標だけを選んで、自分の見やすい並びで置けるという点が異なります。似たことをしようとすると、これまでは無料のBIツール(データを見やすく可視化するための分析ツールです)「Looker Studio」と連携させる必要がありました。連携には、データソースの設定など、ある程度の学習が必要でした。今回の機能は、GA4の画面の中だけで完結する点が大きな変更点です。

なぜ今、Googleはこの機能を追加したのか

背景には、GA4そのものへの「分かりにくい」という評判があります。GA4は2023年、それまで長く使われてきた「ユニバーサルアナリティクス(UA)」に代わって標準になったツールです。UAは、ページの閲覧回数を中心に集計するシンプルな仕組みでした。一方GA4は、訪問者一人ひとりの行動を「イベント」という単位で記録する仕組みに変わり、より詳しいデータが取れるようになった反面、画面の構成や用語が大きく変わりました。移行から3年近くたった今でも、「前と同じ場所に、同じ数字が見当たらない」という戸惑いの声は根強く残っています。

もう一つの背景として、AIによる検索結果の要約表示が広がり、サイトへの流入経路が複雑になっていることも挙げられます。従来のように「検索結果から来た人」とひとくくりにできず、どの経路からの訪問が実際の問い合わせにつながっているかを、より細かく追う必要が出てきています。見るべき指標が増えるほど、それらを1か所にまとめる機能の必要性も高まります。Googleとしては、専任の分析担当者がいない中小規模の利用者でも、必要な数字にすぐたどり着けるようにする狙いがあると考えられます。

競合するアクセス解析・BIツールの多くが、すでに「1画面でまとめて見る」ダッシュボード機能を標準で備えています。GA4がこれまでBIツールとの連携を前提としていたことは、裏を返せば、GA4単体では他ツールに見劣りする部分でもありました。今回の機能追加は、その差を埋める動きだと捉えることができます。

中小企業がまずダッシュボードに並べるべき指標

機能が増えても、「何を並べればいいか分からない」状態では宝の持ち腐れになります。ホームページからの問い合わせ獲得を目的とする中小企業であれば、まず次のような指標をダッシュボードに置くことをおすすめします。

  • キーイベント(コンバージョン)の件数:問い合わせフォームの送信や電話番号タップなど、成果に直結する行動の件数です。すでに計測設定ができている前提のため、未設定の場合は先にキーイベントの設定を済ませる必要があります。
  • 新規ユーザー数とセッション数:どれだけの人が新しく訪れ、何回サイトを利用したかを示す基本の数字です。
  • チャネル別のセッション数:検索、広告、SNS、直接アクセスなど、どの経路からの訪問が多いかを示します。広告費をかけている経路の効果を見るうえで欠かせません。
  • ランディングページ(最初に着地したページ)別のユーザー数:どのページが入り口として機能しているかが分かります。

これらは、いずれも別々のレポート画面をたどらないと見られなかった数字です。ダッシュボードに並べておけば、ログインしてすぐ、これらの数字を横並びで確認できます。

作り方も、特別な準備は要りません。GA4の各レポート画面を開くと、その画面のグラフや表をダッシュボードに追加できるボタンが用意されています。見たいレポートを開くたびに、気になった数字を1つずつ追加していけば、自然とダッシュボードが育っていく仕組みです。最初から完璧な1枚を作ろうとせず、まずは2〜3個の指標を追加してみて、しばらく使いながら並び替えたり増やしたりする、くらいの気軽さで始めるのがよいでしょう。私自身、以前の仕事でいくつものツールの画面を毎回開いて、必要な数字を手作業で拾い集めていた経験があります。個人でマッチングサイトを運営していたときは、労働時間を減らすために「仕組み化」を重視してきましたが、見るべき場所を一つにまとめておくことも、立派な仕組み化の一つだと感じています。毎回どこを見ればいいか考える手間そのものが、地味に積み重なる負担だからです。

ダッシュボードは、経営者や担当者が週に一度、数分だけ確認する運用にも向いています。毎日細かく追う必要はありません。前の週と比べて、問い合わせ件数やどのチャネルからの訪問が増減したかをざっと眺めるだけでも、サイト改善のヒントになります。

注意点。ダッシュボードは「見る」機能であり「考える」機能ではない

便利な機能ですが、誤解しておきたくない点もあります。

第一に、ダッシュボードはあくまで数字を並べて見やすくする機能であり、原因を分析したり、改善案を出したりする機能ではありません。数字が下がったことに気づいた後、「なぜ下がったのか」を考えるのは、これまでどおり人の役割です。

第二に、キーイベント(コンバージョン)の設定が済んでいないと、ダッシュボードに並べても意味のある数字は出てきません。フォーム送信や電話番号タップをキーイベントとして計測できているか、先に確認しておく必要があります。設定自体は難しくありませんが、後回しにしている事業者は意外と多いです。

第三に、カードの枚数には上限があるため、あれもこれもと欲張って並べすぎると、かえって「結局どこを見ればいいか分からない」状態に逆戻りします。最初は5〜6個程度の、本当に毎週確認したい指標だけに絞ることをおすすめします。より込み入った分析(複数のサイトを横断して比較する、期間ごとの詳細な推移を追うなど)をしたい場合は、これまでどおりLooker Studioのようなツールを使う場面も残ります。ダッシュボードは、日々の「まず見る画面」を軽くするための機能だと考えておくとよいでしょう。

まとめ

項目 内容
何が追加されたか GA4に、主要指標を1画面にまとめられる「ダッシュボード」機能が追加
追加時期 2026年9月9日ごろから順次利用可能(ヘルプセンター記載)
何が変わったか 外部のBIツールと連携しなくても、GA4の画面内だけで1画面化できるようになった
まず並べる指標 キーイベント件数、新規ユーザー数・セッション数、チャネル別セッション数、ランディングページ別ユーザー数
注意点 分析・改善案は出してくれない。キーイベント設定が先。枚数を欲張りすぎない
この記事に出てきた専門用語 かんたんな意味
GA4(Googleアナリティクス4) Googleが無料で提供しているアクセス解析ツール
キーイベント(コンバージョン) 問い合わせフォーム送信など、成果に直結する訪問者の行動
チャネル 検索・広告・SNSなど、訪問者がサイトにたどり着いた経路の種類
ランディングページ 訪問者が最初に着地したページ
BIツール(Looker Studioなど) 複数のデータを見やすく可視化するための分析ツール

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