Googleが、広告の「本当の効果」を測るための機能「コンバージョンリフト測定」を、検索広告とPerformance Maxでも自分で設定できるようにしたと、海外のSEO専門メディアSearch Engine Landなどが2026年10月8日に報じました。これまでは担当者経由の申請が必要だった機能です。ただし、使うには一定の条件があり、多くの中小企業にはそのままでは当てはまりません。この記事では、何が変わったのかと、中小企業がこの考え方から何を学べるかを整理します。
「コンバージョンリフト測定」とは何か、何が変わったのか
広告の効果を見るとき、多くの人は「広告をクリックした人が、その後に問い合わせや購入をしたかどうか」を見ています。これは「コンバージョン(CV。問い合わせや購入など、広告主が目標とする行動のことです)」と呼ばれ、広告の成果指標として最も一般的に使われています。
ところが、この数字には弱点があります。広告をクリックした人の中には、そもそも広告がなくても同じ行動を取っていた人が含まれている可能性があるのです。たとえば、もともと自社名で検索して訪れる予定だった人が、たまたま広告もクリックしていた場合です。この場合、広告が本当に新しい問い合わせを生んだとは言えません。
この弱点を補うのが「コンバージョンリフト測定」です。広告を見せたグループと、意図的に広告を見せなかったグループを比較し、両者のコンバージョン数の差(リフト。増加分のことです)を調べる手法です。クリックした人だけを見るのではなく、広告を出した場合と出さなかった場合を比べることで、広告が本当に生み出した成果を測ろうとする考え方です。
Search Engine LandやSearch Engine Roundtableの報道によると、Googleはこれまでアカウント担当者を通じた申請が必要だったこの機能を、2026年10月に検索広告とPerformance Max(複数の広告枠に自動で配信するGoogleの広告形式です)でも、広告主が自分の管理画面から直接設定できるようにしたとされています。これまでディスプレイ広告・動画広告などで提供されてきた仕組みが、主力の広告形式にも広がった形です。
なお、Google側の一部のヘルプページには、まだ「担当者に相談してください」という古い案内が残っているとの指摘もあります。変更が全アカウントに行き渡っているとは言い切れないため、気になる方は自社の管理画面で実際に設定できるかを確認するのが確実です。
利用のハードルは高め、中小企業の多くはそのままでは対象外
ここで中小企業の広告主にとって重要なのが、利用条件です。報道によると、この測定を行うには、最低でも1,000件のコンバージョン(問い合わせや購入などの実績)が必要とされています。さらに、対象となるキャンペーンには最低5,000ドル(日本円にすると、為替レートによりますが70万円台後半程度。あくまで目安であり、実際のレートで変動します)の予算が求められるとされています。
この条件を見ると分かるとおり、月間の広告予算が数十万円規模、コンバージョン数が月数件〜数十件程度の中小企業にとっては、そのままでは利用できる規模ではありません。この機能は、もともと大規模な広告予算を持つ企業向けに作られた仕組みであり、中小企業向けの簡易版ではない、という点をまず押さえておく必要があります。
また、対応している広告形式にも条件があります。報道では、ディスプレイ広告・検索広告・動画広告・Demand Gen(ソーシャルメディア的な面に配信する広告形式です)・アプリ広告・Performance Maxが対象とされる一方、iOS向けのアプリ広告や旅行向け広告は対象外とされています。加えて、1つのキャンペーンは同時に1つの測定にしか参加できない、という制約もあるようです。
つまり今回のニュースは、「中小企業もすぐに使える新機能が増えた」という話ではありません。むしろ「大企業向けの精密な効果測定の仕組みが、申請の手間なく使える範囲に広がった」というニュースとして理解するのが正確です。この点を誤解したまま「うちも導入しよう」と考えると、条件を満たせずに終わってしまいます。
中小企業が実際に取り入れられる、考え方のエッセンス
私は個人事業主として、HubSpotの運用代行やデジタル広告の運用支援を行う中で、「広告費をかけた分、本当に問い合わせが増えたのか」という質問を、何度もお客様から受けてきました。実際にクリック数やコンバージョン数だけを見ていると、見かけ上は数字が伸びていても、それが広告のおかげなのか、たまたまの時期的な要因なのかが分からないことがあります。
コンバージョンリフト測定そのものは使えなくても、その根底にある考え方は、中小企業でも取り入れられます。ポイントは「比較の対象を作る」ことです。具体的には、次のような方法があります。
- 期間を分けて比較する:広告を出していた期間と、一時的に広告を止めた期間の問い合わせ数を比べる。季節要因がある業種では、前年同時期との比較も合わせて見る
- 地域を分けて比較する:複数の店舗・エリアを展開している場合、一部の地域だけ広告を強めて、他の地域と問い合わせ数の変化を比べる
- 流入元を分けて見る:GA4で、広告経由の問い合わせと、指名検索(自社名やサービス名で検索すること)経由の問い合わせを分けて記録し、両方の動きを継続的に追う
いずれも、Googleの正式な測定手法ほど厳密ではありません。ただし、「クリックされた数」だけで広告の価値を判断するより、はるかに実態に近い判断ができます。広告を止めてみたら問い合わせがどう変わるか、一度試してみるだけでも、見えてくるものがあります。
「成果」をどう測るかという問題は、広告だけの話ではない
この「本当の効果をどう測るか」という問題は、広告運用だけに限った話ではありません。リスティング広告に限らず、ホームページ改善やSEO対策でも、「対策をしたから成果が出た」のか「別の要因で成果が出ただけ」なのかを見分けるのは、簡単ではありません。
だからこそ、私が提供している「半年で売上・問い合わせを2倍に 成果報酬プログラム」では、契約時に問い合わせ数かWeb経由の売上のどちらかを指標として選び、6ヶ月という期間を定めて、その指標が実際に2倍になったかどうかで成果を判断する形にしています。期間と指標をあらかじめ決めておくことで、「本当に効果があったのか」という曖昧さを減らす狙いです。
もちろん、これもGoogleのコンバージョンリフト測定のような厳密な統計手法ではありません。しかし、比較の基準をあらかじめ決めておくという発想そのものは、今回のニュースが示す「本当の効果を測る」という考え方と、根っこの部分でつながっています。
よくある誤解・注意点
ここまでの内容を踏まえて、誤解しやすい点を2つ挙げておきます。
誤解1:「コンバージョン数が増えた=広告の効果」とは限らない。コンバージョン数は、広告をクリックした人の行動を数えているだけです。その人がもともと問い合わせる予定だったのか、広告がきっかけで新たに問い合わせたのかは、コンバージョン数だけでは分かりません。
誤解2:比較のための期間・地域を分けるテストは、短期間では判断を誤りやすい。1週間だけ広告を止めて問い合わせが減らなかったとしても、それだけで「広告は不要」と判断するのは早計です。業種によって問い合わせの周期は異なるため、最低でも1ヶ月程度、できれば季節要因も踏まえた期間で比較するのが安全です。
まとめ
Googleのコンバージョンリフト測定は、大規模な広告予算を持つ企業向けの仕組みであり、多くの中小企業がそのまま使える機能ではありません。しかし、「クリック数だけでなく、本当の効果を比較で測る」という考え方は、規模を問わず参考になります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 変更の内容 | コンバージョンリフト測定を、検索広告・Performance Maxでも担当者なしに自分で設定可能に(2026年10月、報道ベース) |
| 利用条件 | 最低1,000件のコンバージョン、キャンペーン予算5,000ドル以上などが必要とされる |
| 中小企業への影響 | 条件を満たせず、そのままでは利用できないケースが多い |
| 代わりにできること | 期間・地域・流入元を分けて問い合わせ数を比較し、広告の実際の効果を見る習慣をつける |
| 判断のコツ | 短期間の結果だけで判断せず、季節要因も含めて比較する |
最後に、この記事に出てきた専門用語を一覧にまとめます。
| 記事内の専門用語 | 意味 |
|---|---|
| コンバージョンリフト測定 | 広告を見せたグループと見せなかったグループを比較し、コンバージョン数の増加分(リフト)を調べる測定手法 |
| コンバージョン(CV) | 問い合わせや購入など、広告主が目標とする行動 |
| Performance Max | 複数の広告枠に自動で配信するGoogleの広告形式 |
| Demand Gen | ソーシャルメディア的な面を中心に配信する広告形式 |
| 指名検索 | 自社名やサービス名そのもので検索されること |
