「SNS広告を出してみたけれど、問い合わせてくる人の役職や会社の規模がバラバラで、本当に決裁者(けっさいしゃ。最終的に契約するかどうかを決める権限を持つ人のことです)に届いているのか自信が持てない」。BtoB(ビーツービー。会社が会社を相手に商品・サービスを販売する取引のことです)企業からよく聞く悩みです。この記事では、役職や業種、会社の規模で狙いを絞れるLinkedIn広告の仕組みと、導入前に確認しておきたい判断基準を整理します。

背景: BtoBの広告で「決裁者に届いているか」が見えにくい理由

多くの中小企業は、広告を始めるときにFacebook・Instagram広告から検討します。利用者数が多く、少額の予算からでも始められるためです。実際、年齢・地域・興味関心を細かく指定できるこの2つの広告は、個人向けの商品やサービスには向いています。

しかし、BtoBの商材になると事情が変わります。Facebook・Instagramは個人が趣味や生活のために使う場が中心で、広告の表示先を「会社の役職」や「業種」で直接絞り込む機能がありません。興味関心から推測はできても、相手が本当に決裁者かどうかは分からないのです。

この結果、クリックは増えても、問い合わせてくる相手が学生や個人、あるいは決裁権のない担当者ばかり、という状態が起こります。広告費は減らず、商談につながる問い合わせだけが増えない。BtoB企業の多くが、この壁にぶつかっています。

原因: なぜFacebook・Instagram広告はBtoBの決裁者に届きにくいのか

Facebook・Instagramのターゲティング(狙った人にだけ広告を届けるための設定のことです)は、基本的に個人のプロフィールと行動履歴をもとにしています。年齢、地域、投稿への反応、閲覧した商品といった情報は豊富ですが、「現在の勤務先」「役職」「従業員数」といった仕事上の情報は、入力が任意であるため精度が低くなります。

私は以前、沖縄ITイノベーション戦略センターでFacebook・Instagram広告の運用を担当し、従来の3分の1の費用で運用できる体制を作った経験があります。その際に痛感したのは、類似オーディエンス(既存顧客と似た特徴を持つ人を自動で見つける機能のことです)を使っても、業種や役職まで絞り込むことはできないという限界でした。興味関心が近い人は見つかっても、その人が決裁者かどうかまでは分からないのです。

もう一つの原因は、利用者の意識の違いです。Facebook・Instagramを開いているとき、人は仕事モードではなく、プライベートな時間を過ごしています。そこに仕事の提案を見せても、関心を持ってもらいにくいという構造的な問題があります。

LinkedIn広告の仕組みと、Facebook・Instagram広告との違い

LinkedIn(リンクトイン。ビジネス上のつながりや転職活動のために使われる、仕事に特化したSNSのことです)は、利用者が実名と勤務先、役職を登録して使うサービスです。この情報をもとに、広告の配信先を「役職」「業種」「従業員数」「勤務先企業」といった仕事の条件で直接絞り込めます。

具体的には、次のような絞り込みが可能です。

  • 役職:「部長以上」「経営層」など、決裁に近い立場の人に限定する
  • 業種:自社が得意とする業種、過去の取引実績がある業種に絞る
  • 従業員数:対応できる企業規模(小規模事業者向けか、中堅・大企業向けか)に合わせる
  • 勤務先企業:商談化したい特定の企業リストを指定して、その会社の社員にだけ広告を見せる

最後の「勤務先企業を指定する」配信は、Facebook・Instagramにはない発想です。すでに商談中の企業や、以前に名刺交換した企業の社員にだけ広告を見せることで、営業担当者からの連絡とは別の経路で、サービスの認知を後押しできます。

一方で、LinkedInは日本国内の利用者数がFacebook・Instagramに比べて少なく、業種によっては広告が届く人数自体が限られます。IT・コンサルティング・人材業界では利用者が多い一方、地域密着型の店舗業やBtoC中心の業種では、そもそも想定する決裁者がLinkedInを使っていない場合もあります。始める前に、自社の見込み客がLinkedInを使っているかどうかの確認が欠かせません。

LinkedIn広告を始める際の判断基準と予算感

LinkedIn広告は、役職や業種で絞り込める分、1クリックあたりの広告費がFacebook・Instagram広告より高くなる傾向があります。これは、広告を出したい会社が多い割に、配信できる枠(決裁者に見せられる広告の数)が限られているためです。少ない予算で多くのクリックを集めることを目的にするなら、LinkedIn広告は不向きです。

判断の目安になる基準を3つ挙げます。

  1. 商談単価が高い商材かどうか:1件の成約で得られる金額が大きい商材ほど、1クリックあたりの広告費が高くても採算が合いやすくなります。
  2. ターゲットとする役職や業種が明確かどうか:「経営者向け」「情報システム部門向け」のように、相手の役職や業種をはっきり言語化できる商材ほど、LinkedInの強みを活かせます。
  3. Facebook・Instagram広告で、問い合わせの質に課題を感じているかどうか:クリックは来るが決裁者からの問い合わせが少ない、という課題を抱えている場合は、LinkedInへの切り替え・併用を検討する価値があります。

逆に、個人向けの商品やサービス、あるいは1件あたりの単価が低い商材では、LinkedIn広告の広告費に対して得られる成果が見合わないことが多くなります。まずは少額の予算で数週間試し、問い合わせの質(役職や会社の規模)が改善するかどうかを見てから、予算を増やす判断をおすすめします。

稟議資料を作る側にも効果がある

LinkedIn広告のもう一つの利点は、広告を見せる相手が、そのまま社内で稟議(りんぎ。関係者の承認を得るために、書類を回して決裁をもらう社内手続きのことです)を通す立場の人である可能性が高いことです。現場担当者経由で情報が伝わるのを待つより、決裁者本人に直接サービスの存在を知ってもらえれば、その後の商談で稟議資料を用意する際にも話が通りやすくなります。

実践時の注意点・よくある失敗

LinkedIn広告を始める際、注意したい点が2つあります。1つ目は、Facebook・Instagram広告と同じクリエイティブ(広告に使う画像・動画・文章のことです)をそのまま使い回すことです。LinkedInの利用者は仕事モードで画面を見ているため、プライベート向けの軽い表現よりも、具体的な業務上の課題や成果を示す表現のほうが響きます。

2つ目は、ターゲットを広げすぎることです。「決裁者全般」のように条件をゆるく設定すると、配信対象が増えて広告費はかさむ一方、自社の商材とかみ合わない層にも表示されてしまいます。役職・業種・従業員数の3つは、できるだけ具体的に絞り込んでから配信を始めることをおすすめします。

まとめ

Facebook・Instagram広告で決裁者に届いているか分からないと感じたら、役職や業種で直接絞り込めるLinkedIn広告を検討する価値があります。ただし広告費は高めで、商材や予算によって向き不向きがあります。

課題 見直しの方向性
問い合わせの役職・会社規模がバラバラ 役職・業種・従業員数で絞り込めるLinkedIn広告を検討する
Facebook・Instagram広告で決裁者に届いているか不安 少額の予算で数週間試し、問い合わせの質の変化を見る
広告費に対して成果が見合うか分からない 商談単価が高い商材、役職が明確な商材から優先して試す
特定の商談先企業の社員に認知を広げたい 勤務先企業を指定した配信を使う
記事内の専門用語 意味
決裁者 最終的に契約するかどうかを決める権限を持つ人
BtoB 会社が会社を相手に商品・サービスを販売する取引
ターゲティング 狙った人にだけ広告を届けるための設定
類似オーディエンス 既存顧客と似た特徴を持つ人を自動で見つける機能
LinkedIn ビジネス上のつながりや転職活動のために使われる、仕事に特化したSNS
稟議 関係者の承認を得るために、書類を回して決裁をもらう社内手続き
クリエイティブ 広告に使う画像・動画・文章

どの広告媒体が自社に合うかは、商材や狙いたい決裁者によって変わります。無料相談では、貴社の商材に合わせて、Facebook・Instagram広告とLinkedIn広告どちらから始めるべきかもお伝えします。