「補助金は書類が大変で、結局使わないまま終わった」。中小企業の経営者からよく聞く話です。中小企業庁が案内する小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>の第20回公募要領が公開され、申請受付は2026年11月5日(木)から、締切は12月15日(火)17時と決まりました。ホームページの改善や広告など、販路開拓のための費用に使える補助金です。基本の上限は50万円ですが、特例を組み合わせると最大250万円まで補助の対象が広がります。今回は、この補助金の要点と、締切までに準備しておきたいことを整理します。
持続化補助金 第20回の概要と、これまでの変更点
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所や商工会の管轄地域にある小規模事業者が、販路開拓(新しい顧客との取引を広げる取り組み)やホームページ改善などに取り組む費用の一部を補助する制度です。対象になる「小規模事業者」の定義は、業種によって異なります。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は従業員5人以下、製造業その他や宿泊業・娯楽業は20人以下が目安とされています。個人事業主も対象に含まれます。
第20回(一般型・通常枠)の補助上限は、基本50万円、補助率は経費の2/3です。賃金引上げに取り組む事業者のうち、赤字の事業者はさらに補助率が3/4まで上がります。これに特例を加算できる仕組みもあります。インボイス(適格請求書)を発行する事業者向けの「インボイス特例」で+50万円、従業員の賃金を引き上げる「賃金引上げ特例」で+150万円が上乗せされ、両方を満たすと上限は最大250万円になります。
第19回からの変更点としては、賃金引上げ特例の判定方法が、従業員ごとの時給ではなく、給与総額の増加率で判定する方式に変わりました。また、ホームページ改善や広告運用などにあたる「ウェブサイト関連費」は、上限30万円(税込)とされ、単独では申請できない扱いが続いています。この点は後ほど詳しく触れます。デジタル化・AI導入補助金や省力化投資補助金など、他の補助金制度と比べても、持続化補助金は比較的小規模な費用の販路開拓に向いた制度だといえます。
ウェブサイト関連費で何ができ、何に注意すべきか
持続化補助金の対象経費のうち、ホームページの新規制作・改修、LP(ランディングページ、商品やサービスの説明と申し込みを1枚にまとめたページのことです)の作成、広告運用費などは「ウェブサイト関連費」という区分に含まれます。中小企業の経営者からは、「ホームページを作る費用に補助金を使えるなら、ちょうどいい」という声をよく聞きます。実際、この区分は人気が高い使い方の一つです。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は、上限が30万円(税込)に設定されていることです。ホームページ制作やLP改善に数十万円から数百万円をかける場合、全額が補助対象になるわけではありません。2つ目は、ウェブサイト関連費だけを単独で申請することができない点です。チラシ作成費や展示会出展料など、ほかの販路開拓の経費と組み合わせて申請する必要があります。
さらに、見落としがちな注意点として、交付決定(申請が採択され、正式に補助金の対象として認められること)の「前」に発注・契約してしまった費用は、対象外になります。「早く作り始めたいから」と、採択前にホームページ制作会社へ発注してしまうと、その費用には補助金を使えません。サイトリニューアルを検討している場合は、発注のタイミングを交付決定後にそろえる必要があります。
申請のために今から準備しておきたいこと
第20回は、申請受付開始が11月5日、締切が12月15日17時です。一見、1カ月以上の期間があるように見えますが、準備には想像以上に時間がかかります。
代表的な必要書類の一つが「事業支援計画書(様式4)」です。これは、申請者の事業の状況や取り組み内容について、商工会議所・商工会が確認・助言したことを示す書類で、商工会議所・商工会への相談と発行の手続きが必要です。発行には一定の日数がかかるため、締切ぎりぎりではなく、締切の数日前までに発行を済ませておく必要があるとされています。「締切に気づいてから動く」のでは、この書類だけで間に合わなくなる可能性があります。
もう一つの注意点は、特例の要件確認です。インボイス特例や賃金引上げ特例を希望する場合、要件を一つでも満たせなければ、上乗せ分だけでなく補助金全体が対象外になるリスクがあります。「賃上げするつもりで特例を申請したが、実際には実行が難しかった」という事態を避けるため、自社が無理なく達成できる水準かどうかを、申請前に社内で確認しておくことをおすすめします。見積書の取得にも時間がかかるため、ホームページ制作会社や広告代理店など、依頼先の候補への相談も早めに始めておくとよいでしょう。
採択されやすくする事業計画書の考え方
持続化補助金の審査では、申請書に記載する事業計画の内容が重要な判断材料になります。単に「ホームページを新しくしたい」という希望だけでは、採択の可能性は上がりにくいとされています。審査する側が見ているのは、その費用をかけることで、どのような販路開拓の効果が見込めるかという説明の具体性です。
私自身、沖縄県の外郭団体に在籍していた時期に、補助金事業の事務局側の業務を担当していました。申請書を受け付ける立場から見ると、内容の良し悪しがはっきり分かれるのは「費用と効果の結びつきが説明できているかどうか」でした。「ホームページを改善して、問い合わせ数を何件増やしたいのか」「そのために、具体的にどこを直すのか」まで書けている申請書は、読む側にも狙いが伝わりやすくなります。
事業計画書を作る際は、現状の課題(例えば、問い合わせ数が増えない、特定の商品の売上が伸びていない)を具体的に挙げ、ウェブサイト関連費やチラシ作成費をどう使うことで、その課題にどう対応するのかを順に説明する構成がおすすめです。社内で稟議(りんぎ。費用をかける計画について、関係者の承認を得る社内手続きのことです)を通すときの考え方と、基本的には同じです。費用対効果を数字で示す視点は、補助金の審査でも、社内の承認でも共通して求められます。
よくある誤解。他の補助金と同時に使えるとは限らない
持続化補助金について、もう一つ注意しておきたい誤解があります。「複数の補助金を同時に申請して、同じ費用に重ねて使えばよい」という考え方です。実際には、同一の経費に対して複数の補助金を重複して受け取ることは、原則として認められていません。例えば、ホームページ制作費について、持続化補助金とデジタル化・AI導入補助金の両方から補助を受けることはできません。
自社が取り組みたい内容によって、どの補助金が向いているかは変わります。ホームページ改善のように比較的小規模な費用を、チラシ作成や展示会出展などと組み合わせて使いたい場合は持続化補助金が向いています。一方、業務システムの導入など、ITツールの導入そのものが目的の場合は、デジタル化・AI導入補助金のほうが制度の設計に合っていることが多いです。自社の目的に合わせて、どちらの制度で申請するかを先に決めておくと、準備の手間を一本化できます。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請受付 | 2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17時 |
| 補助上限・補助率 | 基本50万円・2/3(賃上げ+赤字で3/4)。特例加算で最大250万円 |
| ウェブサイト関連費 | 上限30万円(税込)。単独申請不可、交付決定前の発注は対象外 |
| 必要書類 | 事業支援計画書(様式4)。商工会議所・商工会への早めの相談が必要 |
| 記事内の専門用語 | 意味 |
|---|---|
| 公募要領 | 申請の対象・条件・スケジュールなどを定めた公式の案内文書 |
| 小規模事業者 | 業種により従業員5人以下または20人以下を目安とする事業者の区分 |
| ウェブサイト関連費 | ホームページ制作・LP作成・広告運用費などにあたる対象経費の区分 |
| 事業支援計画書(様式4) | 商工会議所・商工会が事業者の取り組みを確認し発行する必要書類 |
| 交付決定 | 申請が採択され、正式に補助金の対象として認められること |
| 稟議 | 費用をかける計画について、社内の関係者から承認を得る手続き |
締切までの日数は十分にあるように見えても、事業支援計画書の発行や見積書の準備には時間がかかります。早めに動き始めることが、採択の可能性以前に、申請そのものを間に合わせるための最低条件になります。ホームページ改善の費用対効果や進め方について相談したい方は、無料相談でお伝えしています。
