「どのキーワードで上位表示を目指せばいいのか分からない」「狙った言葉では、競合が強すぎて勝てない」——SEO(エスイーオー。検索エンジン最適化。検索結果で上位に表示されやすくするための対策のことです)に取り組む中小企業の担当者から、こうした相談をよく受けます。原因の多くは、記事を書く前の「キーワード選定」(どの検索語をねらうかを決める作業のことです)でつまずいていることです。この記事では、検索意図から考える選び方の基本と、無料で使える情報源、そして実際に手を動かすときの5つのステップを順番に解説します。
なぜキーワード選定でつまずくのか
多くの中小企業が最初につまずくのは、検索ボリューム(けんさくボリューム。ある言葉が1か月にどれくらい検索されているかを示す数のことです)が大きい言葉だけを基準に選んでしまうことです。検索ボリュームが大きい言葉は、一見魅力的に見えます。しかし、そうした言葉はすでに大手企業や専門メディアが上位を占めていることが多いです。中小企業が同じ言葉で勝負すると、上位表示されるまでに何年もかかることがあります。
もう一つのつまずきは、自社が言いたい言葉を選んでしまうことです。「高品質」「安心」「地域密着」は、会社として伝えたい価値観です。しかし、検索する人が実際に入力する言葉とは、ずれていることが多いです。検索エンジンは、検索した人が入力した言葉に合わせて結果を出すためです。
私自身、2004年にホームページ制作の仕事を始めた当初、検索ボリュームの大きい言葉ばかりを追いかけ、半年近く成果が出なかった経験があります。後になって、検索する人が本当に知りたいことに答える言葉を選ぶように変えました。すると、少しずつ上位表示される記事が増えていきました。キーワード選定は記事を書く前の準備であり、ここでの判断が記事全体の成果を左右します。
検索意図から考える:何を知りたくて検索しているか
検索意図(けんさくいと。検索した人が、その言葉を入力した本当の目的・知りたいことです)を考えることが、キーワード選定の出発点です。同じ言葉でも、検索意図はいくつかの段階に分かれます。代表的なのは「知りたい(情報収集)」「比較したい」「今すぐ依頼したい」の3つです。
例えば「ホームページ制作」という言葉で検索する人の中には、まだ依頼先を探していない人も含まれます。制作の流れや相場を知りたいだけの人も混ざっています。一方「ホームページ制作 見積もり」のように具体的な言葉が加わると、検討が進んでいる人の割合が増えます。
引っ越し業者を探す場面で考えると分かりやすいです。最初は「引っ越し 費用」で相場を調べ、次に「引っ越し業者 比較」で候補を絞ります。最後に「引っ越し業者 見積もり 〇〇市」のように地域名を加えて、依頼先を決めます。検索する言葉は、検討が進むにつれて具体的になっていきます。
自社のサービスが、検索意図のどの段階に応える記事なのかを意識して選ぶことが重要です。BtoBで問い合わせを増やすコンテンツ企画の立て方でも触れていますが、検索意図に合わない記事は、検索ボリュームが大きくても問い合わせにつながりません。
ロングテールキーワードで「狙える場所」を増やす
検索ボリュームの大きい一語のキーワードは、競合が強いです。中小企業が短期間で上位表示を狙うのは難しいです。そこで有効なのが、ロングテールキーワード(複数の言葉を組み合わせた、検索回数は少ないものの検索意図がはっきりしている言葉のことです)です。
ロングテールキーワードの作り方は、サービス名に別の言葉を組み合わせることです。組み合わせる言葉には、いくつかの型があります。
- 地域名との組み合わせ(例:「〇〇市 外壁塗装」)
- 悩み・疑問との組み合わせ(例:「ホームページ 問い合わせ来ない」)
- 対象者との組み合わせ(例:「中小企業向け CRM」)
- 比較・条件との組み合わせ(例:「HubSpot 料金 比較」)
これらの組み合わせは、検索回数こそ少ないですが、検索している人の意図がはっきりしています。地域名を組み合わせた検索は、ローカルSEO(MEO)の整備ともあわせて考えると効果が高まります。来店や来社を伴う業種では、地域名を含めたキーワードを優先的に狙う価値があります。
ロングテールキーワードは、1本あたりの検索回数は少なくても、本数を増やすことで合計の流入を積み上げられます。検索意図がはっきりしている分、問い合わせにつながる割合も高くなりやすい傾向があります。最初からビッグキーワードを狙うのではなく、ロングテールキーワードから着実に実績を積む方が、中小企業には現実的な進め方です。
無料で使える情報源からキーワードの候補を探す
キーワードの候補を探すために、有料の調査ツールが必ず必要というわけではありません。無料で確認できる情報源だけでも、十分に候補を集められます。
1つ目は、Google検索のサジェスト(検索窓に文字を入力したときに表示される、関連する言葉の候補のことです)です。自社のサービス名を入力し、どんな言葉が続けて表示されるかを確認します。検索結果の下部に表示される、関連性の高い検索の一覧も参考になります。
2つ目は、Googleサーチコンソール(自社サイトが、どんな言葉で検索結果に表示され、クリックされているかを無料で確認できるGoogleの仕組みです)の検索パフォーマンスです。すでに何らかの言葉で表示されているものの、クリック率が低い記事を見つけられます。そうした記事は、見出しや本文に言葉を加えるだけでなく、タイトルの書き方を見直すことで改善する場合があります。
3つ目は、社内に眠っている情報です。営業担当やお客様対応の担当者が、問い合わせの電話やメールで実際に受けている質問は、そのままキーワードの候補になります。「料金はどれくらいか」「他社と何が違うか」という質問は、検索する人の疑問とほぼ一致していることが多いです。
候補を集めたら、実際にその言葉で検索してみて、上位10件がどのような内容かを確認します。自社で太刀打ちできそうな競合の強さかどうかを、最後に自分の目で確認する工程を省略しないことが大切です。
キーワード選定の方法:5つのステップ
ここまでの考え方を、実際の作業の順番に並べ直します。初めて取り組む場合も、この順番どおりに進めれば迷いにくくなります。
ステップ1:自社の「軸になる言葉」を3〜5個書き出す
最初に、自社のサービスを一言で表す言葉を書き出します。「外壁塗装」「税理士」「ホームページ制作」のような、サービスそのものの名前です。これを軸キーワード(じくキーワード。組み合わせの土台になる、短く基本的な言葉のことです)と呼びます。軸キーワードは、多くても5個程度に絞ります。数が多すぎると、後の作業が膨らんで手が止まりやすくなるためです。
ステップ2:組み合わせの候補を集める
次に、軸キーワードに組み合わせる言葉を集めます。前の章で紹介したサジェストや関連検索、サーチコンソール、社内に届く質問が情報源です。この段階では、良し悪しを判断せず、とにかく数を集めることに集中します。表計算ソフトに1行1候補で書き出していくと、後で並べ替えや絞り込みがしやすくなります。
こうしてできる「軸キーワード+別の言葉」の組み合わせを、複合キーワード(ふくごうキーワード。「外壁塗装 費用」のように、複数の言葉を組み合わせた検索語のことです)と呼びます。前の章で説明したロングテールキーワードは、この複合キーワードの中でも、特に具体的で検索回数の少ないものを指します。
ステップ3:検索意図ごとに分類する
集めた候補を、「知りたい」「比較したい」「今すぐ依頼したい」の3つに分けます。たとえば「外壁塗装 時期」は知りたい、「外壁塗装 業者 比較」は比較したい、「外壁塗装 見積もり 〇〇市」は今すぐ依頼したい、に入ります。問い合わせに直結しやすいのは「今すぐ依頼したい」ですが、そこだけを狙うと記事の本数が増えません。「知りたい」段階の記事で入り口を作り、比較・依頼の記事へ内部リンクで案内する組み立てが現実的です。
ステップ4:競合の強さを見て、狙う順番を決める
候補ごとに実際に検索し、上位10件を確認します。見るべき点は次の3つです。
- 上位が大手企業や大手メディアばかりか、中小企業や個人のサイトも混ざっているか
- 上位の記事が、その検索語に真正面から答えているか(答えが浅い記事が上位なら、狙える余地があります)
- 上位の記事の情報が古くなっていないか
中小企業や個人のサイトが上位に混ざっている言葉、答えが浅い記事が並んでいる言葉から優先して書きます。大手ばかりの言葉は、後回しにするか、より具体的な複合キーワードに言い換えて狙います。
ステップ5:1記事1キーワードで書き、公開後に確認する
狙うキーワードが決まったら、1つの記事では1つの主なキーワードに絞ります。そのキーワードは、タイトル・最初の段落・見出しの一部に、自然な形で入れます。同じ言葉を無理に何度も繰り返す必要はありません。公開して1〜2か月たったら、サーチコンソールで実際にどんな言葉で表示されているかを確認します。想定と違う言葉で表示されていれば、その言葉に合わせて見出しや説明を書き足すと、順位が上がることがあります。
実例:入門記事と複合キーワードでアクセスを3倍にした取り組み
私自身、沖縄ITイノベーション戦略センター在籍時に、沖縄県内のIT企業向けビジネスマッチングサイトの改善を担当し、アクセス数を3倍に伸ばした経験があります。このときの中心も、キーワード選定でした。
当時のサイトは、掲載企業の情報がメインでした。企業情報は欠かせないものの、会社名を知らない人がわざわざ探しに来ることは少なく、それ自体に人を集める力はほとんどありません。そこで、FintechやセキュリティなどIT関連の専門的なテーマについて、初めて調べる人向けの入門記事を増やしました。
テーマを決める際は、SEOツールでどの複合キーワードにアクセスがあるかを調べ、その中で競合が比較的少ない分野を重点的に書きました。上の5ステップでいえば、ステップ2〜4にあたります。入門記事で検索から人を呼び込み、そこから企業の個別ページへ案内する導線(サイトを訪れた人を、見てほしいページへ自然に案内する道筋のことです)を用意したことで、入り口と行き先の役割分担ができました。
この経験から言えるのは、キーワード選定はサイトの目的とセットで考えるべきだということです。アクセスが集まりやすい言葉を選ぶだけでなく、その記事を読んだ人を次にどのページへ案内するのかまで決めておくと、集まったアクセスが成果につながりやすくなります。
実践時の注意点・よくある失敗
キーワード選定でよくある失敗が2つあります。1つ目は、ロングテールキーワードを追求しすぎて、検索ボリュームがほとんどない言葉ばかりを選んでしまうことです。検索する人がほぼいない言葉では、記事を書いても読まれません。候補を絞る際は、サジェストや関連検索に実際に表示される言葉かどうかを、最低限の目安にしてください。
2つ目は、一度決めたキーワードを検証せず、そのまま使い続けることです。記事を公開した後は、サーチコンソールで表示回数やクリック率を確認します。想定と違う結果であれば、見出しやタイトルの言葉を調整します。キーワード選定は、公開して終わりではなく、公開後の確認までを含めた作業だと考えてください。
まとめ
キーワード選定は、検索ボリュームの大きい言葉を選ぶ作業ではありません。検索意図を読み取り、検索する人がはっきりと求めていることに答える言葉を選ぶ作業です。中小企業にとっては、ビッグキーワードより、ロングテールキーワードを積み重ねる進め方が現実的です。無料の情報源からでも、十分に候補は見つかります。
| 選び方の視点 | 確認すること |
|---|---|
| 検索意図 | 知りたい・比較したい・今すぐ依頼したい、のどの段階か |
| 検索ボリューム | サジェストや関連検索に表示される、実際に検索されている言葉か |
| 競合の強さ | 上位10件の内容を、自社で太刀打ちできそうか |
| 記事への配置 | 1記事1キーワードで、タイトル・最初の段落・見出しに自然に入れたか |
| 公開後の確認 | サーチコンソールで表示回数・クリック率を確認し、調整したか |
| 記事内の専門用語 | 意味 |
|---|---|
| SEO(検索エンジン最適化) | 検索結果で上位に表示されやすくするための対策 |
| キーワード選定 | どの検索語をねらうかを決める作業 |
| 検索ボリューム | ある言葉が1か月にどれくらい検索されているかを示す数 |
| 検索意図 | 検索した人が、その言葉を入力した本当の目的・知りたいこと |
| 軸キーワード | 組み合わせの土台になる、サービス名などの短く基本的な言葉 |
| 複合キーワード | 「外壁塗装 費用」のように、複数の言葉を組み合わせた検索語 |
| 導線 | サイトを訪れた人を、見てほしいページへ自然に案内する道筋 |
| ロングテールキーワード | 複数の言葉を組み合わせた、検索回数は少ないものの検索意図がはっきりしている言葉 |
| Googleサーチコンソール | 自社サイトがどんな言葉で検索結果に表示され、クリックされているかを無料で確認できるGoogleの仕組み |
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